ドイツの再エネ賦課金は上昇するのか?

ドイツの4つの系統運営会社が10月15日に発表する予定だった2016年の再エネ賦課金について、この分野をリードするシンクタンクは、賦課金の大幅な上昇を予測していました。しかし、この予測は大事な点を見落としていました。

9月15日にベルリンにあるAgora Energiewendeは、再エネ賦課金が現在のkWhあたり6.17セントから6.4〜6.6セントの間まで上昇する可能性があると発表しました(ドイツ語記事)。その理由は、平均卸電力価格が2014年10月の3.57セントから0.32セント下がって2015年9月に3.25セントまで落ち込んだことです。卸価格が下がれば再エネ電力が電力市場で上げる収益が下がり、再エネ電力発電事業者が(再エネ法を通じて)受け取る固定価格とのギャップが大きくなってしまうことで賦課金の額は上がります。

しかし、計算にはもう1つ考慮すべき項目があります。収支におけるバランスです。現在、再エネ賦課金口座には30億ユーロ以上の黒字があります。昨年、私はこの大幅な余剰にもかかわらず、負荷金額の大幅な低減がなかったことについての驚きを記事に書きました。

当時、賦課金口座には14億ユーロありました。仮に、現在の余剰に大幅な低減が起きたとしても、過去12ヶ月にわたって15億ユーロが追加で口座に支払われているはずであり、合わせて29億ユーロになっているはずです。これを加味すると、その総額は全体の10%以上となります。そのため、ある程度の減額はあると考えられます。

(出典:Netztransparenz.de)

出典:Netztransparenz.de

Agoraのいくぶんシンプルな計算方法は2つの点で説明することができます。1つ目は、単にAgoraがこのなんとも直感的ではない計算を通じて、卸価格の低下が賦課金の上昇に直結するという点に注目が集まるように仕向けているということです。これに関して、Agoraは彼らの独自の再エネ賦課金計算モデルを参照するよう読者に求めています。興味深いことに、このモデルでは、口座の残高を20億ユーロ以上に設定することができなくなっています。そのため、過去数週間の実際の残高の数値で計算することができないのです。しかし、例えば上限額である20億ユーロで計算した場合、Agoraのモデルによる来年の賦課金の計算結果は5.9セントとなります。

そして、これが2つ目の説明へとつながるのですが、Agoraは「私たちが把握していない何か」を知っているかもしれないということです。Agoraのスタッフは、トップの意思決定者と定期的なミーティングの機会を持っています。ひょっとすると、彼らは私たちにシグナルを送っているのかもしれません。つまり、余剰額は賦課金の減額には使われず、実際には系統運営会社に対して無償貸付となっているということです。昨年、Spiegel紙は、政府がこれらの企業に対してさらなる余剰の積立にゴーサインを出していたと報道しました。そのため、疑問点は、この増える余剰がいつ実際に賦課金の低減のために用いられるのかということです。

2013年から2014年にかけて、固定価格買取制度による支払額は25億4,000万ユーロ増加して、223億ユーロになりました。しかし、口座の収支残高は36億ユーロ上昇して22億ユーロの赤字から14億ユーロの黒字へと転換しているのです。

再エネ賦課金についての続報

上記の私の投稿についていくつかの興味深いフィードバックをいただきましたので、それらをシェアしたいと思います。

匿名を希望する内部の関係者は、Agoraの来年の再エネ賦課金の評価は「確度が高い」と書いてきました。彼は、Agoraは口座残高の余剰額を27億2,000万ユーロと予測しているが、これは私の予想である29億ユーロとそう大きな差がないことを指摘しています。

より重要な事は、検討すべきは余剰額だけではないと彼が述べている点です。予測もそれと同じくらい重要だということです。私も、特にAgoraの将来の風力発電に関する最近の調査を鑑みた際に、この指摘について同様に考えました(私も言及しています)。Agoraが指摘したように、風力発電の陸上から洋上へのシフトによって、大量に比較的高価な電力が流れ込むことになります(洋上風力向けの支払額は、陸上風力向け支払額の最も高額なケースよりも明らかに高くなっています)。

そのため、彼らは再エネ賦課金が今後数年は上昇を続け(私の記事も参照)、2022年前後にピークを迎えてその後は遥かに低いレベルまで低下すると考えています(卸電力価格によって異なりますが、おおよそ2.2-4.4セント程度)。

ドイツの再エネ賦課金の推移のシナリオの1つ。赤:低い卸価格と青:高い賦課金額の関係性(の逆転)に注意。(出典:Agora Energiewende)

ドイツの再エネ賦課金の推移のシナリオの1つ。赤:低い卸価格と青:高い賦課金額の関係性(の逆転)に注意。出典:Agora Energiewende

Agoraも、ツイッターを通じて私の記事に応えています。それによれば、2016年の余剰金は「2017年の影響を鑑みて」使われるということです。私は、これはつまり、口座には多少のバッファーが確保されており、今後数年に渡って洋上風力の上昇が再エネ賦課金の急激な上昇につながらないようにしていると理解しました。(この調整は、2017年に次の選挙を迎える政府与党にとってもありがたいものです。つまり、今のうちに価格を上げておくことで、来たる選挙の時には安定させられる可能性があります)

重要なことは、政治的な影響力を持つ人が、現在一人も「バランシングメカニズム」を廃止することを提案していないことです。(政治的な影響力を持っていない再エネ推進者の多くは廃止を求めているのですが − 例えば、ドイツの先導的な太陽光発電研究者であるEicke Weberのドイツ語によるプレゼンテーションの映像を見てください)

2010年に実施されたバランシングメカニズムにより、卸市場での売上が計算式に加わっています。それ以来、再エネ賦課金は打ち上げロケットのように上昇し、その価格インパクトは実際よりも遥かに大きな印象を与えています。実際に政策に影響を与えることにできる立場にあるドイツのエネルギーコンサルタントFelix Matthesなどは、上記の理由でエネルギー転換の本当の価格を示す上で、賦課金額は良い指標ではないと主張しています。しかし、多くの批判が賦課金に向かっている限り、政策に変化は起きない、とも述べています。

2009年に立ち返れば、Lorenz JarassとWilfried Voigtは、新しい「バランシングメカニズム」が再エネ賦課金の作為的な上昇を引き起こし、その結果、コスト影響が過大に見えることで再エネの成長を妨げる危険性があると警告する論文(ドイツ語)を発表していました。6年経った今、その効果は明らかです。

クレイグ・モリス@PPchef

元記事:Renewables International “German renewable energy surcharge to rise?”(2015年9月17日)および “More on the renewable energy surcharge”(2015年9月18日)ISEPによる翻訳