2015年のドイツの電力エネルギー総まとめ

6. 卸売電力価格はさらに下がるが、家庭の料金は高止まり

ここで他の欧州諸国のマーケットでの電力価格を少し書いておきましょう。(レポートでは1MWh当たりのユーロで示されていますが、私たちの感覚ではわかりにくいので、ここでは1kWhあたりのユーロセントで示します)

比較的高い国は、イタリア、イギリスが5~6ユーロセント(およそ6.5~7.8円)、スペイン、ポルトガルが5ユーロセント、オランダが4ユーロセント(およそ5.2円)、フランスが4ユーロセント弱、ドイツが年平均で3.1ユーロセント(およそ4円)などとなっています。ドイツより安いのは、ノルウェーなどのスカンジナビア諸国が作る市場のノルドプールで、欧州でもっとも安い水準になっています。

ドイツの電力価格を2015年内の推移でみると、5月が2.5ユーロセントと最も安く、一方10月が最も高く4ユーロセント弱、平均は先ほど述べたように3.1ユーロセントでした。5月は太陽光発電が最も多い時期だからと思われます。2008年には6.99ユーロセント(およそ9円)と現在の倍以上で取引されていました。その後も下がり、2011年の5.6ユーロセントを経て着実に安くなってきています。

見通しについてもレポートは示しています。今後も価格は下落傾向で、2016年から2017年の年間平均価格は3ユーロセントを下回るとみられています。また、その先2019年に向かってさらに下落し、その年末には2.5ユーロセントに迫る勢いです。

解説:電力料金とは何か

「ドイツの電力料金が再エネの拡大のために高くなって消費者が苦しみ企業は海外へ移転している」と言われたことがありました。このレポートの数字を見ると、あれ、だいぶん話が違うとお思いかもしれません。

まず、電力料金とは何かを考えてみましょう。すぐに浮かぶのは、毎月私たちが払っている電力料金です。私が住む東京電力では、12月分を計算すると1kWhあたり27円強でした。これは、一般家庭の消費者が支払う電力価格です。同様に、高圧契約で企業の払う価格もあります。

一方で、先ほどからご紹介しているのは、電力市場における卸売りの価格です。つまり、電力の価格と言っても、必ずしも一つではなく、何について話しているかを確認する必要があります。一方だけ取り上げて高い安いと言うのは、意味がありません。そして、ドイツの一般家庭の消費者が払う料金については、このあと理由も含めて述べますが、実際にかなり高止まりしています。

ところが、卸売りの価格は欧州の最低ラインです。最大の理由は再エネの拡大で、特に需要のピーク時に多く発電する太陽光発電の影響です。これまでも何度か書いたように、スポット市場で最優先に売られる大量の太陽光による電力が、メリットオーダー効果によって他の発電手段からの電力の価格も押し下げることになるためです。

そして、大量の電力をこの市場から仕入れることができる企業はその恩恵をたっぷり得ています。また、それに加えて賦課金の大幅な減免措置もあります。よって、恩恵に与れる比較的大きな企業は苦しんでいるどころか、再エネのおかげで助かっています。実際に「再エネの拡大による電力料金の高騰」でドイツから出ていった企業は1社もありません。これは、ドイツ政府が議会で認めている公式見解です。一方、一般家庭の消費者はそうはいきません。

ドイツの家庭の電力料金は高止まり

今年の一般家庭の電力料金は、平均で1kWhあたり29.5ユーロセントと予想されています。これは、日本円で38円にもなります。はっきり言って高いです。

その内訳を見てみましょう。まず、良く問題にされる再エネの賦課金です。2016年は、およそ6.4ユーロセント(およそ8.3円)で、電力料金のおよそ2割となります。2015年に初めて少し下がりましたが、今年は再び3%ほど上昇しました。全体の料金もそれに合わせるように2014年(29.5ユーロセント)からいったん下がり(29.1ユーロセント)、今年また2014年の水準に戻ってしまいました。残りの8割分を含めた内訳は下記の通りです。

2016年の家庭用電力料金(29.5€cent/kWh)とその内訳
発電原価 7.1(24%)
税金 6.8(23%)
託送料 6.8(23%)
再エネ賦課金 6.4(22%)
地域配電料 1.6 (5%)
その他賦課金 0.8 (3%)

発電原価、税金、託送料、賦課金でほぼ4分割されています。発電原価が4分の1にすぎないのに驚かれるかもしれません。発電原価は1kWhあたり9円ほどで、これは昨年より0.5ユーロセントも下がっています。2011〜12年の8.4ユーロセントから低落傾向が続いていますが、これは先ほど見た卸売市場の価格の低下を反映している形です。

また、電力を卸売市場から手に入れることを考えると、電力の原価は市場卸売り価格+賦課金となります。こちらは、卸売市場の価格下落を受けて、このところ1kWhあたり10ユーロセントを下回り続けています。2016年も下がって、卸売り価格の平均3.35ユーロセント(70%が1年先物ベース、30%が1年先物ピーク)+賦課金6.35ユーロセントで、合計9.70ユーロセントです。

解説:なぜ家庭の電力料金が高いのか

コストを押し上げているのは、なんといっても税金です。20%近い付加価値税の上にさらに環境税がかかっています。再エネの賦課金と合わせると料金の半分近くを占めています。さらに託送料の上昇が止まらないことが問題で、せっかく卸売り価格が低下していても、家庭の電力料金は逆に上がる現象が起きています。

実際には、安い卸売市場から仕入れた電力を元にした一般家庭への安価な料金プランもあります。しかし、消費者が小売事業者をあまり変えないという現実があって、卸売市場での低下メリットが電力料金に及びにくく、この対策も課題になっています。

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