3.11後の日本のエネルギー×デモクラシー

対話の場と民主主義の質

平川 さっき最後の方で言った、対話の場、市民社会の民主化の話、民主政の専門家の話をもう少ししておきたいと思います。

対話の場について、さっき小林さんがおっしゃった民主党の末期にあったエネルギー・環境問題に関する熟議型世論調査があります。これは宮台さんがおっしゃったフィシュキンが考えて、アメリカなんかでは地方政治で実際に色々な実例があったり、また日本でも藤沢市とか地方の行政で使ったことがあります。

熟議型世論調査は、単に脊髄反射的にアンケートに答えるのではなくて、ちゃんといろんな意見の人たちと議論しながら、また専門家のいろんな情報提供やレクチャーなんかを聞いた上で判断して、アンケートに答えるという形式の世論調査なのですけれども、そうしたことを、国のエネルギー・環境戦略を決める過程で民主党政権が行いました。

これには実は、第三者検証委員会として、うちの同僚も関わっていました。少し無駄話をすると、新しいエネルギー政策・環境政策を決めるにあたって、国民的議論ということで何らかの熟議の取り組みを行うという話が、原発事故の直後くらいから出てきていました。しかし、それを具体的にどうやってやるのかはなかなか出てこなかった。いったいどうやってやるのだろう?やらないのかな?なんて思っていたら、突然ですね、2012年の6月の半ばに、資源エネルギー庁から、国民的議論を実施するための会社を公募する入札公告が出ました。しかも実施するのが8月の上旬であまりにも準備期間が短い。

我々研究仲間では、私も含めて、そうしたテクノロジーに関する市民参加型の評価、参加型テクノロジーアセスメントと呼ばれているものを、日本でもたくさんやってきました。これまでに30件以上実例があるのですけれども、そうした実例を踏まえて言うと、準備期間が一ヶ月半なんていうのはもうとんでもない、ありえないのです。

先ほど小林さんのお話のなかで、民主主義では質が大事だとありました。例えば、討論型世論調査で提供される情報・知識に偏りがないかどうか、きちんとバランスよく提供されているかどうか、正確であるかどうか。これを確保するというのは、単に専門家を集めるというだけでは済まない話です。非常に難しい、デリケートなプロセスです。それをきちんと確保するというのはそれなりに時間と手間をかけないとできません。そういうものをすっ飛ばして一ヶ月ちょっとでやろうというのはとんでもないと。

そういうわけで私ども研究者では、6月末に急きょ意見書を作成し、経済産業省と資源エネルギー庁に提出するとともにプレスリリースも発表しました。さらに、ちょうど私はその当時、朝日新聞の論壇時評の委員もやっていまして、たまたま私がコラムを書く回だったので、その中でもエネ庁、政府のやり方はあまりにもずさんであるという批判を書きました。そしたらこれらが、国民的議論を企画した国家戦略室の役人に響いたらしく、これはまずいということで、第三者検証委員会を設けて、国民的議論の準備や運営が公正に行われているかを見てもらうことにした、ということがありました。

これで何を言いたいかというと、実際に見えないところで、対話を政策決定プロセスの中に位置づけるという、そういう変化は起きているということです。それは、自公政権に代わったところで一気になくなってしまったのですが、そうした後戻りの変化というものも、さっきの宮台さんのお話で言えば、「これじゃまずい、我々が動かなきゃいかん、任せてばかりではいられない」というみんなの意識を、かえって強くすることにつながっているのだと思います。そういうふうに前向きに捉えれば、民主党から自民党に政権が移ってバックラッシュした、ということも含めて、まさに今過渡期なのだろうと思います。

その中で、我々市民社会の側でも、場合によっては政・官のなかでも、変化は起きつつあるのだと思います。そういうものをいかにつないで、次につなげるかということが大事かなというのが、言っておきたいことです。

最後に、民主政の専門化ということで言うと、やはり、我々が民主主義に大事な質を確保する上で、市民が物事を判断するための大事な情報や知識をどうやって確保していくのかという問題があります。そのために、市民社会の側で独立した専門的な機関、エネルギー分野であればISEPや原子力資料情報室だと思いますが、あるいは食品の安全性とか、環境保護、福祉とか、いろんな分野で市民社会の側に立った専門的組織をどう育てていけるかが重要なポイントになると思います。

そのために、我々自身も直接かかわらなくても、例えば寄付というかたちも間接的にはあるかもしれませんけれども、何らかのかたちで市民社会に根ざした専門性をいかに育てていくかというのは非常に大事だと思いますので、ぜひ、今後ISEPの活動を支える中で皆さんさまざま模索していただければと思います。

<ページ 6:アソシエーショナルな協働性

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