太陽光発電を巡るトラブルから考える日本の土地利用制度のあり方

新たな土地制度のあり方 − 地方分権を徹底する

2000年の地方分権一括法による「機関委任事務」の廃止は、国と地方自治体の関係を上下・服従の関係から対等・協力の関係へと転換することにほかならない。

その上、地方自治体に法令に違反しない限り全ての事務について条例を制定することができるようにした。これを自治事務と呼ぶが、土地に関する事務も原則としてこの自治事務となったのである。以上の点を実定法レベルで明確化するためには、「法律は制度の大枠的なものを定めるにとどめ、制度の具体的な内容は地方自治体の条例で規定できる」ように改正することが望ましい。

しかし、現行の個別法を地方分権の観点から見直すことは行われていない。残念ながら「大枠も法律、詳細も法律」という従来の考え方のままのものが残っている。そのことに加え「財産権の制約は法律でしかできず、条例ではできない」「法律を運用するにあたっては、条例を定める場合には法律の明示的委任が必要である」というドグマによって国の行政が運営されている場合もあるようだ。

そもそもまちづくりを徹底して分権化することは、以下の理由から必然的方向なのである。そもそも都市計画は、都市空間の形成と利用につき関係する多様な利害関係者がさまざまな要求を持つことを前提として、計画策定主体がその諸要求の相互の間で一定の価値序列を選択・決定することを意味するものである。

その計画と規制さらにはそれに基づく諸事業などが「公共的なもの」として人々に受容されるためには、そこで選択・決定された価値序列(都市形成の具体的かつ実態的な目標像)が「公共性」(その目標を実現するための手段として、所有と利用の調整の在り方、「計画なくして開発なし、建築不自由の原則」など具体的な適用のあり方)に則したものであると同時に、その中に都市形成の主体たるべき者(すなわち、主権者としての地域住民等のステークホルダー)の総意が適切に反映されていなければならないことから、計画の策定主体(地域住民に選ばれた首長)と策定手続き(地域住民に選ばれた議員が構成する議会の議決)が死活的に重要な意味を持つ[15]からである。

      • [15] 原田純孝編著「日本の都市法Ⅰ構造と展開」(東大出版会・2001)「序」

おわりに

本稿では、農山漁村の活性化のためには、地域資源の活用による「内発的発展」、すなわち、6次産業化に加え、エネルギー事業に取り組むことにより、その利益を活用して、自ら雇用や所得を創出する自律的な経済をつくり出すことも可能になると指摘した。

そして、太陽光発電などの再生可能エネルギー事業と土地利用規制のあり方を論じてきた。本稿でのあるべき土地利用制度のあり方は、その実現に時間を要するであろう。

しかし、鎌倉市、国分寺市などのいくつかの自治体ではまちづくり条例に関して先駆的な取り組みが見られるようになってきた。

したがって、当面はそうして事例に学びつつ必要な条例を作っていくべきだろう。その場合、歴史、風土、景観等の地域特性を活かしたまちづくりについて、目指すべき方向に関する予測可能性を明らかにすること、それを実現するルールは地域住民をはじめ利害関係者が参画した上で作成された原案を議会の議決にかけるなど民主的かつ透明性の高い手続きによって、構築すること肝要である。

そうした取り組みの中で土地利用計画についていえば、地域の全ての土地を対象とし、土地利用優先の原則に基づき「計画なくして開発なし」「建築不自由」を原則とするものとし、そのことを前提に、「まちづくりマスタープラン」に基づいた「地区計画」に従って、建築・開発が行われるようにすることである。

参考文献

本文脚注掲載以外で参考にした主なものは次の通り(順不同)

    • 渡辺洋三著「土地と財産権」(岩波書店・1977年)
    • 井出英策著「経済の時代の終焉」(岩波書店・2015年)
    • 大西隆編著「人口減少時代の都市計画 まちづくりの制度と戦略」(学芸出版社・2011年)
    • 本間義人・五十嵐敬喜・原田純孝編著「土地基本法を読む 土地・土地・住宅問題のゆくえ」(日本経済評論社・1990年)
    • 五十嵐敬喜編著「現代総有論序説」(ブックエンド・2014年)
    • 金子勝著「資本主義の克服 「共有論」で社会を変える」(集英社新書・2015年)
    • 金子勝・児玉龍彦著「日本病 長期衰退のダイナミクス」(岩波新書・2016年)
    • 武本俊彦著「研究論文 土地所有権の絶対性から土地利用優先の原則への転換―農地制度と都市計画制度の史的展開を通じた考察―」(土地と農業No.44全国農地保有合理化協会・2014年)

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