ドイツのエネルギー転換の変革がスピードと参加に関する議論を巻き起こす

ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)は、これまでのエネルギー転換を可能にしてきたメカニズムです。これにより、再生可能エネルギーの生産者は投資に対する高いリターンが保証され、その結果、再生可能エネルギー電源の導入コストを引き下げてきました。立法に携わる者は、再エネ分野はすでに補助輪が必要ないほどに成熟しており、市場の力にさらされても良いと言っています。EEGの本格的な改正は、消費者の負担を引き下げることが最大の目的です。同時に、新しい法制は毎年の再エネの新規導入容量に上限をかけています。しかし、計画は大きな論争となっています。大手電力会社と産業界は、この変更を正しい方向へのステップと捉えています。再エネロビーと市民エネルギーグループは、この変更によりドイツの気候目標が達成できなくなり、巨大なビジネスの不満を和らげるためにエネルギー転換(Energiewende)の共同精神を損なうことになると述べています。

改正は論争を呼ぶ

再エネ企業は雇用者をデモに参加させ、ツイッターでキャンペーンを行い、意見広告をうち、アンゲラ・メルケル首相府で深夜におよぶ交渉を繰り返しました。このような嵐を呼び起こすエネルギー政策の技術的な変更は稀です。しかし、ドイツの国の再エネに向けたシフトの核となる法律の変更は痛いところを突いています。

「改正は、ドイツのパリ気候協定以後の最初の堕落です」と述べているのはグリーンピースのエネルギー専門家のトビアス・アウストルプです。

アゴラ・エネルギーヴェンデ研究所の所長パトリック・グライヒェンは、「これは再エネにとっても論理的な次のスッテプです」と異なる見解を示しています。

改正の議論は、再エネセクターを市場の競争にさらすこととなり、同時に初めてその成長に厳格な上限を定めることになります。その結果、再エネの成長は鈍化し、2014年2015年のような成長は見られないでしょう。環境主義者は警告し、この変更がドイツの気候目標の達成を阻み、ドイツのグリーン電力へのシフトの根幹である市民所有のエネルギーにとって鎮魂の鐘となって響くだろうと述べています。ドイツ国内に何十万という雇用を生んでいる再エネセクターは、「エネルギー転換にブレーキがかけられることで」危機に陥り、多くの雇用が失われることを恐れています。

再エネの急速な成長

太陽が光り輝き、強い風が吹く春や夏の日は少ないが、そんな日には再エネの発電量がピークとなり、少なくとも数時間にわたってドイツの電力需要のほぼすべてが再エネで満たされるまでになっています。年間を通じて、世界第4位の経済規模を持つ産業国は、その全電力消費量の3分の1を再エネによってまかなっています。

この成果は、ドイツの再エネに対する金融支援システムによって成し遂げられました。それがいわゆる再生可能エネルギー法(EEG)です。四半世紀前に施行されて以来、この法律がもっとも重大な変革を迎えています。これまでのところ、ほぼ電力セクターに限られたものではありますが、ドイツのエネルギー転換(Energiewende)について、この国は事実上プロジェクトの曲がり角へと差し掛かっているのです。

再生可能エネルギー法とは何か?

現在は世界中でお手本とされている、再エネ法の下、屋根の上に太陽光パネルを載せる家庭、風車を建てる協同組合、バイオガス設備を運営する農家、さらには洋上風力発電を運営する機関投資家など、すべての再エネ投資家は、自分たちのグリーンな電力を、卸市場価格を上回る保証価格で20年にわたって販売することが許されています。(詳細はファクトシート「再生可能エネルギー法(EEG)の手法の定義」を参照)

このグリーンな電力に対する「固定価格買取制度(Feed-in Tariffs)」により、安全な投資リターンが約束されたことで、ドイツ国内の再エネプロジェクトは大きな波に乗りました。需要の拡大は、再エネの設備導入コストを急速に引き下げ、固定価格は潤沢なリターンを約束しました。結果、ドイツには現在150万件以上の再エネ設備が稼働するまでになりました。ドイツ国内の発電量に占める再エネの割合は、この法律が施行された1990年当時の3.6%から2015年には30%まで成長しました。

しかし、コストも跳ね上がったという批判もあります。より多くのグリーンな電力が市場を上回る価格で系統に流入すると、その請求額もより大きくなります。買取価格と(ほとんどの場合下落する)市場価格の差は、消費者の電気代の請求書に上乗せする形で転嫁されています。2015年には、消費者は賦課金として、グリーン電力発電事業者に200億ユーロ以上を支払いました。何よりも、変動する再エネ電源を既存の系統に統合していくことはより複雑になってきており、追加のコストが必要になっています。家庭用の電力価格は上昇し、再エネの成長に上限を設けることを求める声が起きるようになりました。加えて、EUは再エネ支援策として、市場をベースとしたメカニズムを導入するよう求めています。しかし、この度の改正にとってこれが重要なファクターだったかについては意見が分かれています。

再エネにとっての新時代

まず、政府はこの議題について再エネ法の2014年改正で着手することを決定しました。現在、新しいルールがどのように機能するかについて記したドラフトが机上にあります。再エネの成長をより良く制御し、コストを管理下に置くため、固定価格買取制度は2017年から新たに開始される競争的オークション市場に置き換えられることとなりました。第一に、政府は再エネの新規設置容量を通達します。投資家は、計画中のプロジェクトで発電する電力を販売したいと思う価格を提示します。最も安い価格を提示したプロジェクトが落札し、その後20年間にわたって固定価格で買い取られます。

この変更の基本的なアイデアは、政府がこの分野の成長を制御する力を持ち、2025年の再エネ電力割合の目標である40〜45%の範囲を超えることがないようにすることです。政府はまた、この改正により、最も経済効率の高いプロジェクトのみが実施されることとなり、トータルコストの最小化が保証されると主張しています。(改正の詳細はファクトシート「EEG改正2016-再エネオークションへの転換」参照)

エネルギー大臣のシグマール・ガブリエルは、この改正を「パラダイムシフト」と呼んでおり、先に控える変更は、ドイツの再エネはすでに十分成熟しており、市場競争から保護するための固定価格買取制度が必要な「ひな鳥の状態」をとっくに脱しているという事実を反映したものにすぎないと主張しています。経済エネルギー省は、オークションシステム以外にも多くの変更を含み、EEG3.0と呼ばれるこの改正は、エネルギー転換の焦点を交通や熱セクターの脱炭素化など、これ以外の主要課題へと転向させ、将来性のあるシステムになると述べています。

ドイツのエネルギー転換に重大な変更が差し迫っていることには多くの人が同意しています。南ドイツ新聞は、この改正を「再エネの新時代」と読んでいます。しかし、改正後の法制が、一挙手一投足が注目されるドイツの脱原発、低炭素な将来のエネルギー供給に向かう動きにどのような影響を与えるかについては、意見が大きく分かれています。重要な議題には以下の3つがあります:

  • これがエネルギー転換のコストを引き下げることに繋がるか?
  • この改正がドイツの気候目標を危機に晒すか?
  • この変更が、ドイツのエネルギー転換における市民参加を葬り去るか?

改正によってコストは下がるのか?

政府は、グリーンな電力の上昇に比べて遅れが見える系統の開発に合わせて再エネの成長を制限する必要があり、オークションによって最も安いプロジェクトだけが実現することを保証することが出来ると述べています。

アゴラ・エネルギーヴェンデ研究所グライヒェンは、ざっくり言って改正法はこれらの目標を達成できるだろうと述べています。「この改正は再エネにとって論理的な次のステップです。再エネが電力市場で最大のプレイヤーであるならば、固定価格買取制度を維持することができないということについて、連邦政府も同意しています。」

政府は、2015年に大規模太陽光についてオークションの試験導入を開始しました。政府は、各ラウンドにおける多くの参加者と価格の下落が成功の証であると述べています(詳細は、「オークションで風力と太陽光の価格を決める-その議論-」の記事を参照)。しかし、批判の中には、このシステムは落札したプロジェクトのうちのいくつが実現されるかを保証していないと警告しているものがあります。

新しいオークションは、再エネの新規設置容量の80%以上をカバーすることになります。中小規模の太陽光(750kWを上限とする-だいたいサッカーコートほどの大きさ)のみがこのプロセスから除外されます。政府は、支援を風力と太陽光に注力したいと述べています。水力、バイオマス、地熱は成長のポテンシャルがあまりなく、EEG2014の再エネ拡大目標達成に最も貢献するのがこの2つだからです。

オークションを通じて再エネの成長に厳格な制限をかけることを求める声は電力系統がすでにその限界に差しかかっており、高価な設備更新なしには風力エネルギーをこれ以上吸収できないことを主張しています。保守的な政党であるCDUのリーダー、フォルカー・カウダーは、コスト削減ために系統の拡張に再エネの発展の足並みをそろえることを要求しています。また、彼は新規に設置された設備については、系統過負荷時に切断する場合でも補償すべきではないと述べています。

ドイツ経済研究所(DIW)のエネルギー政策の専門家であるクラウディア・ケンファートは、この改正は二重の意味で間違いだと述べています。彼女によれば、オークションはコストを引き下げることはなく、成長目標を達成することもできなくなると主張しています。「オークションは計画の確実性を低下させ、投資家の金融リスクを上昇させます。調整後のリスクプレミアムはエネルギー転換のコストを上昇させるのです。加えて、オークションで落札した企業が何らかの理由で設備の建設を遅延した場合、成長回廊も達成できなくなるでしょう。」

PWCコンサルティングの電力会社と規制部門のパートナーであるフォルカー・ブライシックは、Clean Energy Wireに対して、風力のオークションに十分な数の投資家が応札するかは依然不透明だと述べています。「特に、複雑さが増し、リスクが上昇することで、成長は鈍化します(…)。私の印象では、オークションはコストを引き下げますが、リスクプレミアムがどの程度上昇するかについてはまったくわかっていません。」と、新旧の電力事業者と消費者にアドバイスをしているブライシックは述べています。

ケンファートは、ほとんどの他の専門家と異なり、エネルギー転換の成功は、系統拡張によって決まるものではないと述べています。「私たちの研究とモデルによれば、系統の拡張によって損なわれるものは特にありませんし、どうしても必要というものでありません。(…)分散型でインテリジェントな系統とデマンドサイドマネジメント、中期的には蓄電池などの方が遥かに重要なのです。」

ケンファートは、未来の再エネよりも「時代遅れの石炭火力」の供給が多いことが、系統の拡張が必要な理由だと述べています。最近のグリーンピースの調査も、再エネではなく従来型の発電所で発電される電力が系統をブロックしているという、よく似た結論になっています。グリーンピースのエネルギー専門家であるアウストルプは、政府が再エネの導入と系統の拡張の歩調を合わせようとしていることについて「意味がなく、再エネに歯止めをかける言い訳にしかならない」と述べています。さらに、「再エネの発電がピークを迎えている時であっても、原発は最大負荷で運転しています。本来は、柔軟性のない発電所を取り除くことを目標とすべきです」。

グライヒェンは、地域から見た場合、多くの化石燃料や原子力発電所が、再エネの発電量が最大の時に発電量を抑えるには柔軟性がなさすぎるために、これらの批判が正当化されているのだろうと述べています。

より早い再エネの成長を擁護する人たちはまた、グリーンな電力の普及にブレーキをかけることによって削減できるコストはわずかにすぎないと主張しています。応用生態学研究所バーデン・ヴュルテンベルク州環境省のために作成した調査報告では、再エネの成長を制限しても消費者の電力価格が受ける影響はわずかしかないと試算されています。その理由は、莫大なコストは、20年前の高い買取価格を受け取っている初期の再エネ設置にかかるものだからです。逆に最新の再エネ設備が受け取ることができる価格は低いため、コストに与える影響は小さいのです。

アゴラ・エネルギーヴェンデ研究所によれば、再エネ賦課金の額は2023年にピークを迎え、その後は減少に転じます。「予測されるEEG賦課金の現象の主な理由は、2023年からEEGの初期に建てられた高価な設備に対する補助期間が切れる一方、新しい設備はとてもコスト効率的に発電しており、さらに安くなることが期待されています」とパトリック・グライヒェンは述べています。

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