ドイツのエネルギー転換の変革がスピードと参加に関する議論を巻き起こす

気候目標が危機に?

この改正では、2014年に初めて合意された再エネの成長に対しての上限(回廊)が設けられています。過去数年新しい風力発電設備がかなりのスピードで建設されており、このままではドイツは2025年での総電力消費における再エネ電力量の目標値である40〜45%を超えてしまうことになりかねません。現在目標は2035年までに55〜60%、2050年までに少なくとも80%まで再エネの割合を高めることを目指しています。

この目標に到達するため、改正では「設置上限(回廊)」を再エネの種類別に設けています。太陽光発電の毎年の新規設置容量は2.5GWを目指しており、このうち600MW がオークションにかけられます。陸上風力発電は2017〜2019年が毎年2.8GW、2020年からは毎年2.9GWを目標としています。これは毎年およそ1000本の風車が新たに設置される規模です。国内の洋上風力発電も、2020年までに6.5GWまで増やし、2030年までに15GWまで増やす予定で、毎年730MWがオークションにかけられます。バイオマスは、今後3年間は年間150MW増やし、その後の3年は200MW 増やす予定となっています。

環境団体と再エネを応援する人たちは、この成長率ではドイツの気候目標を達成することは不可能であると述べています。

「2025年の再エネ割合を45%に留めるということは、化石燃料のシェアが55%もあるということであり、これは大手電力会社への影響を緩和することを目的としている」と、グリーンピースのエネルギー専門家のアウストルプはClean Energy Wireに述べています。「大手企業の生き残りを確実にすることと、国際的な気候保護はどちらがより重要な事なのでしょう?」

ベルリン応用科学大学(HTW)の研究は、ドイツが、2040年までにエネルギー分野の完全な脱炭素化を達成し、パリ協定の目標を達成するためには再エネを今の容量から4〜5倍増やす必要があると結論づけています。この研究によれば、交通と熱分野の電化の推進に従って電力需要が増加することを考えると、新しい再エネ目標が達成できないことになります。その研究の著者でHTW再生可能エネルギーシステム学教授のフォルカー・クヴァシュニングは、陸上風力発電は毎年ネットで2.8GWではなく、6.3GW 成長するする必要があると述べています。また、太陽光発電は2.5GWではなく15GWの成長が必要です。

これにはケンファートも同意しています。「電力モビリティは再エネを使ってはじめて意味があるのです。まさにそのために、再エネをスローダウンさせるのではなく、促進させなければならないのです。」

政府は、交通と熱分野の電化が将来的に電力需要を相当に押し上げることを把握しています。しかし、ライナー・バーケ事務次官はある今年初めの公開会議の場で再エネの目標回廊は絶対値ではなく%値で定められており、いくつかの批判が懸念しているより多くのグリーン電力を織り込んでいると述べています。また、彼は、オークションシステムは、必要とあれば再エネ容量のさらなる増加の方向に進むことを許容していると述べています。「もし電力需要が増加すれば、私たちはオークションの容量を増やすことに必要な多数派を獲得できるでしょう。」とバーケは述べています。「しかし、今適切な需要量がないなかで、発電量を増やすことは馬鹿げています。」

アゴラ・エネルギーヴェンデ研究所パトリック・グライヒェンは、長期的な観点から見れば、今改正案で定められた再エネ導入目標は低すぎると述べています。「2025年の再エネ目標は、この導入回廊でも間違いなく達成できるでしょう。改正の目的は、目標を大幅に超えないことです。しかし、長期的な再エネ目標の達成からか考えればこの量は十分とはいえません。」

しかし、エネルギー大臣ガブリエルは、エネルギー転換の環境への真の効果を保証するためにもコストを抑制することは非常に重要だと述べています。彼いわく、地球レベルの温室効果ガス排出量におけるドイツのシェアは小さく、ドイツがエネルギー転換を進めても地球温暖化自体は不可避であるが、世界中が受け入れて初めて意味のあるものになると述べています。そのため、ドイツは産業に大きなダメージを与えることなく再エネへの転換は可能だということを証明する必要があるのです。「そうしなければ、どの国も私たちの後に続かないでしょう」とガブリエルは2016年春の公開会議の場で述べています。

ドイツ経済連盟(DBI)は、多くの従来からある製造業者が電力代の上昇を心配しているという声を拾い上げている。BDIは、改正の動きは「遅すぎる。今まで、ドイツ国内の再エネはコスト、供給の安定性、系統開発などを無視して推進されてきた」と述べています。

市民エネルギー協同組合の終焉か?

3番目の疑問はエネルギー転換への市民参加に関するものです。2012年には、ドイツ国内の再エネ設備容量のおよそ半分ほどが個人かエネルギー協同組合を通じた市民所有と推定されていました(詳細は、文書「人々のエネルギー転換」参照)。経済エネルギー省は、小さな協同組合を含む「高いレベルの多様性の確保」は、エネルギー転換を計画的に進める能力、競争の導入によるコスト削減と並ぶ、オークションプロセスの3本柱の1つだと述べています。しかし、批判派は、新しいルールのもとで、企業の開発案件が協同組合方式に比べて不当に有利になりかねないと述べています。

「私たちは新しいルールが新しい協同組合プロジェクトの終焉を意味することを懸念しています」とClean Energy Wireに語るのは、全国エネルギー協同組合事務所の所長アンドレアス・ヴィーグです。「オークションは、典型的な市民協同組合法式にとって問題です。なぜなら、参加するためには5〜10万ユーロと高額の支度金が必要となるからです。オークションで落札できない場合、この資金は失われるのです。」

ヴィーグは、協同組合は典型的には、単一のプロジェクトの実現に向けた計画のみを行い、オークションで失注するリスクを分散することができません。大型のビジネス案件の開発を行ない、同時に複数の案件に参加できる民間企業とは異なります。

こうした批判を受け、経済エネルギー省は、市民協同組合の参加をどのように促すかについて、風力発電のオークションにかかる、協同組合のための例外規定の追加コンセプトを公表しました。しかし、ケンファートは、このコンセプトを救済措置としては「絶望的な企て」と評しています:「市民エネルギー協同組合は、この改正の最大の敗者となるでしょう。」

バーケは、プロポーザルを公開した後、市民エネルギーの支持者の前で、「ドイツのエネルギー転換のトレードマーク」であるアクターの多様性を確保することは、経済エネルギー省の強固な意志であると訴えました。彼は、ソーラー入札の導入試験で、協同組合の参加が成功裡に終わったことが、市民エネルギープロジェクトがオークションで競合できることの証左であると述べています。

しかし、ヴィーグによれば、落札した協同組合のプロジェクトは、古いEEGルールの下で計画されたものの、時間通りに完成しなかったプロジェクトであると言います。

グリーンピースのアウストルプは、新しいルールが、プレイヤーの数を激減させ、エネルギー転換の性格を変えてしまうだろうと述べています。「エネルギー転換は巨大企業のプロジェクトとなるでしょう。ローカルな取り組みがはじき出されることでエネルギー転換に対する社会的受容に問題が起きるでしょう。」

多くの再エネ産業の代表者は、この改正が大手電力会社の生き残りを画策していることが透けて見えると言っています。それは主に従来型の発電所、もっと言えば、E.OnRWEEnBWVattenfallです。アンゲラ・メルケル首相は、2016年6月の電力会社の集まる会議で、エネルギー転換が電力会社を水際から追い出してはならないことを強調しました。「私たちは主なエネルギーの供給業者がエネルギー転換から課せられる負担によって潰れることがないことを補償しなければなりません。」

PWCのアドバイザー、ブライシックは、入札システムの複雑さは、大きな会社に有利だと述べています。「これは間違いなく、再エネ開発のプロフェッショナル化です。」

世論調査では、ドイツ人の大多数がエネルギー転換を支持しています。(詳細はファクトシート「世論調査で市民のエネルギー転換支持が明らかに」)。しかし、多くの専門家は市民参加が再エネへの世論の支持の獲得と、ウィンドファームなどの特定の再エネプロジェクトに対する地域の反対意見を克服することにとって重要だと述べています。

「市民の直接的な参加は、社会的受容の問題、またはNIMBY(not-in-my-backyard)を解決する唯一の方法です。」とヴィーグは強調します。「エネルギー協同組合は再エネ発電容量の一部を占めるにすぎないとしても、そこには16万人が参加しているのです。例えば効率性向上、スマートグリッド、モビリティの転換など多くのエネルギー転換の将来の課題に取り組むモチベーションを結集するためには、一般の人々の大部分が取り組む必要があります。」

他方で、大規模な民間投資企業はオークションへの変更を賞賛しています。E.Onのスポークスマンのマルクス・ニッチュケはClean Energy Wireに対して、「私たちは経済エネルギー省が競争を強化する方向に舵を切ったことに対して概ね賛成しています。」デンマークの洋上風力発電企業Dong Energyもこの改正案を歓迎しており、オークションが価格を引き下げ、競争を活性化させると指摘しています。

将来の協同組合の役割を支えるための方法は、大規模ビジネス案件に参加することです。E.OnのニッチュケはClean Energy Wireに対して、「陸上風力発電の開発に地域の住民が参加することは私たちのスタンダードなやり方です。社会的受容の問題です。」と述べています。

ヴィーグは、E.Onのアプローチを歓迎していますが、市民に対して、彼らの資金を投資する以上の可能性がなければならないと述べています。「つまり、市民はわずかな金銭的利益を受けるだけなのか、何かしらの役割を果たすことができるのか、ということです。ローカルオーナーシップを心底感じられることが重要なのです。個々の案件の内容によって、社会的受容やモチベーションに対して与える影響は大きく異なります。」

ブライシックは、改正は多くの異なる投資家が連合することを求めるようになると述べています。「これはなんというか、まったく新しいものになるでしょう。」

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著者:ソーレン・アメラング(Sören Amelang)Clean Energy Wire特派員

元記事:Clean Energy Wire “Germany’s energy transition revamp stirs controversy over speed, participation” by Sören Amelang, June 29, 2016. ライセンス:“Creative Commons Attribution 4.0 International Licence (CC BY 4.0)” ISEPによる翻訳

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