BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンはグリーン交通革命での奮闘を誓う

新たな夜明け?

最近の自動車メーカーとCEOによる発表から、彼らが後ろ向きな姿勢を改め、本格的にモビリティの挑戦を受け入れる準備ができたことがわかります。

2016年の半ばにフォルクスワーゲンは、「大規模な電化イニシアチブ」とデジタル化、自律運転の推進を含む「戦略2025」を発表しました。これによると2025年までに200万~300万台の電気自動車を販売する(フォルクスワーゲンで1日当たりに販売される4台に1台が電気自動車になる)ことを見込んでいます。

フォルクスワーゲンCEOのマティアス・ミュラー氏は、会社が「史上最大の転換」に向き合っていると述べています。彼はさらに「この先にあるものは進化という言葉では言い表しきれません(中略)自動車が急激な変化に直面するだけではなく、モビリティが新しいかたちで定義されるでしょう」と付け加えています。(フォルクスワーゲンの計画に関する詳細はClean Energy WireのファクトシートDieselgate forces VW to embrace green mobilityを参照)

専門家たちは、フォルクスワーゲンの計画は会社だけではなく、業界全体の抜本的な変化になると考えています。「もしeモビリティに関する発表が真剣なものならば、これは非常に大きな一歩であり、フォルクスワーゲンは大量の自動車台数を製造しているため、市場全体を転換させるかもしれない」とモック氏は述べます。

フォルクスワーゲンの発表から数週間のうちに、ダイムラーCEOのディーター・ゼッチェ氏もメルセデスベンツとスマートの製造者を未来のモビリティの担い手へと移行させるという大転換を宣言しました。

「ダイムラーはこれから10年以内で急進的に別の企業へと発展します」とゼッチェ氏は述べます。会社自らがサービスプロバイダーとなり、電気自動車のサブブランドを立ち上げると説明しています。「抜本的な変革が始まったのです」と彼は付け加えています。

あるダイムラーの幹部(匿名希望)はゼッチェ氏の発表直後、「以前、我々は、早過ぎると資金を失うと述べました。いまは、遅過ぎては市場を逃す、と見方を変えました」とロイター通信社に伝えています(ダイムラーの計画の背景については、Clean Energy WireのファクトシートReluctant Daimler plans “radical” push into new mobility worldを参照)。

多くの専門家は、いまだにBMWがドイツの自動車メーカーの中で新しいモビリティ分野のリーダーだと思っています。電気自動車のサブブランド “i” を数年前に立ち上げ、これまでのところドイツの自動車メーカーで唯一の電気自動車 “i3”(最初から燃焼型エンジン向けに開発されたモデルをベースにしていない)を発売しています。

しかし、i3の売り上げは冷え込んでおり、BMWは2016年の前半に電気自動車の開発を加速すべきかどうかで分裂しました。株主の批判に従って、CEOのクリューガー氏は9月下旬にBMW SUV X3の電気自動車版に続いて初めてのMiniの電気自動車を2019年に発売すると発表しました。(詳細はファクトシートEarly e-car starter BMW plans new mobility sprintを参照)

ほとんどのモビリティ専門家は、自動車メーカーの幹部は置き去りにされることを防ぐために急いで対応しなければいけないことに気付いていると意見が一致しています。

「将来のチャレンジが今の最重要課題であることが、最近のCEOたちの発表に表れています」とマッキンゼーのミュラー氏は述べます。「疑いの余地はありません。まだ新型車には現れていませんが、巨額の投資が開発部門に注ぎ込まれています。」

新しいモビリティ世界におけるドイツの自動車メーカーの見通し − 文化戦争

しかし、これは自動車メーカー内で根底からの文化の変革を必要とするため、各企業にとって方針を変更することは容易なことではありません。それぞれの企業は何十万人もの従業員を抱えており、その多くは数十年にわたって燃焼型エンジンに従事してきました。それゆえ、新しいモビリティビジネス部門と伝統的な中核ビジネス分野との間に勢力争いが起こります。

「自動車メーカーに一枚岩のイメージはもはやありません」とホッフフェルド氏は説明します。「自動車メーカーには、何が危機に瀕しているかを理解し、強制的に変革しようとする勢力、個人、部門が存在する一方で、ブレーキを踏む者もいます。いまはまだ変革の主体はまだ少数ですが、近い将来、力の均衡は違って見えるようになるかもしれません」

モック氏はこの分析を支持しています。「例えば、BMWのiブランドは電気自動車を推し進めることに興味を持っています。しかし、その一方で、従来型の技術をなるべく長く販売し、そのために法律にも影響を与えたいと思う部門もきわめて多数あります。もっとも利益を上げるのは従来型ビジネスであり、それゆえに彼らが最優先の立場を享受するのです。」

これらの問題を悪化させるのは、新しいモビリティビジネスと旧来のビジネス部門の「共食い」というリスクです。例えば、カーシェアによる所有形態が広まることで、合計自動車販売数が侵食されます。また、電気自動車の販売が伸びることで、従来型自動車の販売は打撃を受けます。

しかし、フォルクスワーゲンのフロンツェック氏によると、企業は新しいモビリティビジネスが既存のビジネスを侵食することを気にしていないようです。「新しいビジネスエリアは我々に成長の機会を与え、私たちの顧客に新たな選択を提供するでしょう」と述べ、さらに「従来型と代替型のエンジンはフォルクスワーゲンで長年の間、並行して走り続けてきました。我々はこれを矛盾とは思いません。」と、彼は述べています。

同様に、ダイムラーの広報担当ヘルドリッチカ氏は新しいモビリティサービスが既存のビジネスモデルを置き換えるよりも、むしろ補完すると述べます。「私たちはますますサービスプロバイダーになろうとしています。しかし、私たちの調査では、人々の自動車の所有欲は続くという結果が出ています。カーシェアリングは“どちらか一つ”ではなく、”どちらもあり”の問題なのです。」

しかし、変容に関しては、グーグルのような新しい競争相手が重要な強みをもっています。自動車メーカーとは異なり、彼らのDNAには急速で破壊的な変革が組み込まれており、昔からの燃焼型の遺産を背負うこともありません。

ベルリン ポツダム広場のeモビリティ充電. Source: avda, wikimedia commons.

ベルリン ポツダム広場のeモビリティ充電. Source: avda, wikimedia commons.

お金の問題

自動車メーカーは、変革を成功させるために必要な巨額な投資を工面する課題にも対応しなければなりません。これは排気ガスの不祥事を解決するための罰金と賠償金に150億ユーロ以上を支払わなければならないフォルクスワーゲンにとっては特に急を要することです。

世界中の多数の国での市場拡大によって、数十億ユーロという莫大な利益をあげ、大成功を収め続けているドイツの自動車メーカーにとって、これはデリケートな話題です。

もちろん、彼らは伝統的ビジネスで景気の悪い時期にぶつかる可能性もあり、それによって資金調達がますます困難になるかもしれません。

マッキンゼーのミュラー氏によると、近年の中国のようなマーケットでの「目を見張るほどの成長」は終わりを迎えるかもしれません。「この先、私たちは、過剰生産能力、競争激化、価格圧力といった問題を抱えて、かつての成長市場の多くが減速していく様子を見ることになるでしょう。これは、先に進まない技術変革に言及する際に忘れてはならない非常に重要な傾向です。」

ミュラー氏は、環境基準がより厳しくなることで利益にさらに圧力がかかると主張しています。「消費者がより”環境に優しい”自動車にお金を出す心構えができていないことは繰り返し示されてきました。したがって、もし自動車メーカーがよりクリーンなエンジンを開発するために投資をしなければならないのなら、採算性に計り知れないプレッシャーを与えるでしょう。」

新しい技術に多額の投資をするもうひとつの障害は、自動車メーカーの株主が定期的な配当を求めることです。

「株主からのプレッシャーと四半期レポートは、これほど抜本的な変革にとって重大な障害となります」とICCTのモック氏は言います。

彼によると、ほぼ家族経営となっている日本のトヨタのように会社の株主構造が異なる企業では、短期的にはリスクが高くても、最終的に利益を生む長期的目標を追うことはもっと簡単なことでしょう。「ドイツの自動車メーカーはこのような贅沢を享受できません。既存の技術に過剰に賭け、なるべく長く市場で売ろうとすることで身動きが取れなくなってしまうことがよくあるのです。」

しかしここでまたアメリカの競争相手たちは資金調達でも重要な強みをもっているかもしれません。グーグルやアップルは自動車メーカーの予算と比較したら青ざめるほどの巨額のキャッシュの上にあぐらをかいています。その一方、テスラやウーバーはリスクを取ることを奨励し、短期で配当を期待しない投資家から巨額のベンチャーキャピタルを獲得しています。

しかし、マッキンゼーのミュラー氏は、グーグルやアップルのような企業は資金繰りに関して、彼ら独自の困難にぶつかるかもしれないと述べます。「自動車業界での平均利益はITプレーヤーが慣れているものに比べるとずっと低いものです。彼らはモビリティビジネスがその高い期待値を満たすかどうかを自分自身に問いかけねばなりません。その一方で既存プレーヤーはこの分野に100パーセントの熱意で取り組み、この収益環境で運営することに慣れています。これは決定的な強みです。」

ホッフフェルド氏は、自動車メーカーがより多くの資本を確実に手に入れるため、新旧のビジネスエリアを分けなければならないかもしれないと考えています。「古いモデルでも投資家にとって魅力的であり続けられるかどうかは非常に大きな問題であり、それはつまり、従来のビジネスによる収入で新しいモビリティ分野の資金調達ができるのか、という問いを示唆するのです。」

「金融市場は構造変化の重要な推進役です」と、彼は加えます。「例えば、中国最大の自動車メーカーBAICは研究開発の資金調達のためのベンチャーキャピタルを手に入れるため、電気自動車の子会社を切り離しました」と、ホッフフェルド氏は述べます。「資金調達のトラブルはドイツの電力会社E.ONとRWEの分割でも主な原因となりました」

技術リーダーシップのプレミアム

資金アクセスの問題と同様、交通の未来に向けた競争において、ドイツの自動車メーカーの内部分裂と抵抗はきわめて決定的な欠点となります。しかし、専門家たちは、BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲンを見限るという意見には強くクギを刺しています。既存企業は少なくとも1枚の大きな切り札(技術的ノウハウ、実証済みのイノベーション実行能力)を袖の中に持っていると考えるからです。

「多くの人は自動車を組み立てるのがいかに複雑かをまったく理解していません」とモック氏は述べます。「たとえ時代が味方ではなくても、伝統的な自動車メーカーはこの分野において非常に有利なスタートを切ることができるのです」

多くの専門家は、ドイツの自動車メーカーはプレミアムセグメントで大きな存在であることから、特に良い位置につけていると強調しています。プレミアムセグメントでは、伝統的にイノベーションが大きな役割を果たし、利幅が大きいので投資する資金を稼ぐことができました。

ケルン経済研究所によると、ドイツの自動車メーカーは高級車の世界市場で72パーセントを占めています。この研究の著者であるフーベータス・ブラット氏は、自動車メーカーのイノベーション実行能力がカギになると主張しています。

彼はまた、ドイツの自動車メーカーが大衆市場に強い存在である事実を強調しています。「プレミアム市場と大衆市場の双方において、強力で独立したブランドの組み合わせはドイツの自動車業界固有の強みです。」とブラット氏は主張します。

ブラット氏は、自動運転の特許の数をイノベーション実行能力の指標として用いています:この分野の58パーセントの世界的特許はドイツ企業によって登録されています。リストのトップはサプライヤーであるBoschが545件、フォルクスワーゲンの子会社Audiが292件、サプライヤーのContinentalが277件です。

この数値は、Google(198)がダイムラー(156)やBMW(142)より多くの自動運転特許を持っていることも示しています。いずれにせよ、業界の専門家はダイムラーCEOのゼッチェ氏が「テクノロジーに関して、我々が手に入れられなかったものはテスラも持っていない」と今年の初めに述べたコメントが冗談ではなかったと考えています。

ミュラー氏は「エンジニアリングのレベルや、自動車に関する技術と知識が、ドイツ企業がベストな電気自動車をつくることを可能にすると信じています」と付け加えます。

「自動車が最高レベルの安全性を要求され、非常に複雑で厳しく規制された製品であることは既存企業にとって間違いなく強みとなります。そこでは、自動車メーカーにある膨大なノウハウを必要とします。[…] 自動車業界がサプライヤーと共に行ってきた技術開発やイノベーションを軽視してはなりません。」

ドイツの自動車メーカーとサプライヤー、エンジニアリング企業、研究開発企業の緊密なつながりもまた既存企業の強みとして見なされることがよくあります。ドイツ銀行の調査によると「ドイツの自動車クラスターの構造はおそらく世界でも特有のものであり、継続的な生産性向上とイノベーションを可能にします。 […] ドイツは2025年の世界自動車業界でもっとも重要な製造国家のひとつであり続ける上で、良い位置についています。」

生死を分ける危機がもたらす大きな機会

しかし、一部の専門家は、これまでの自動車のハードウェア技術でのリードがどの程度重要になるかはまだわからないと述べています。「将来のコア・コンピタンスは、自動車がいかにデジタル化され、操作できるようになり、交通ネットワーク全体に組み込まれるのかという問いなのです」とモック氏は言います。

バッテリーの製造は、自動車のバリューチェーンのもう1つの重要な部分ですが、いまのところドイツの自動車メーカーがその市場に参入する可能性は低いと見られています。ブラッツェル氏は、自動車メーカーがこの分野に協力すべきだと主張します:「中長期的に、ドイツはeモビリティの海外でのバリューチェーンの重要な部分に手を出せなくなってしまい、それはつまり、自動車の未来にも手を出せなくなるということを意味します。」

BMW、アウディ(フォルクスワーゲンの子会社)、ダイムラーは、2015年にベルリンを拠点とするノキアの地図サービス組織であるHEREを約30億ユーロで買収する協定をすでに結んでいます。デジタル地図は自動運転車の基礎となる上、自動車メーカーはグーグルとアップルの地図サービスへの依存を避けたいと考えています。

しかし、自動車メーカーの中核となる強みがどの程度重要であるのかはまだわかりません。ドイツの自動車業界の技術的表看板は、エンジンと車両の統合であり、それらは電気自動車においてはますます容易になる部分です。

同様に、自動車メーカーのプレミアムセグメントへの依存は、ロボットの軸制御が主役となる新しいモビリティの世界で不利になるかもしれません。

ミュラー氏は「以前はドイツで製造される高級車は、世界中に誇るブランド、パワー、デザイン、情熱がありました。我々は、今後も同じ差別化のチャンスが与えられるか確認する必要があります」と述べます。しかし、彼はドイツの既存企業の強みが失われることはないと考えています。「新しい動力伝達体系に変わることによって、他の特性が廃れるわけではありません。これは新しいモビリティのプレミアムセグメントでも同じでしょう。」

モック氏は「プレミアムが燃焼型エンジンであるという必然性はありません。プレミアムセグメントが完全に再定義される可能性もあります。ドイツの自動車メーカーに関して、私は極めて楽観的です。彼らがどん底に落ちることはないでしょう。もっともありうるシナリオは、自動車メーカーが変容に気づき、適応しようと対処することです。」

ブラッツェル氏のように、専門家の中にはドイツの自動車メーカーは新しいモビリティの世界で失敗する可能性を50:50と見る人もいますが、企業は起こりうる革命を肯定的な観点で見るべきだとミュラー氏は強調します。

「ほとんどの人は危険なシナリオを好みます。しかし、それはすべて肯定的な見方で表すことも可能です。将来のドイツの自動車メーカーにとって完全に新しい可能性を開くとてつもない変革が起こっているのです。」

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[1] Agora Verkehrswendeは、Clean Energy Wireと同じように、メルカトル財団と欧州気候基金が資金を拠出するプロジェクトです。

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著者:ソーレン・アメラング(Sören Amelang)Clean Energy Wire特派員

元記事:Clean Energy Wire “BMW, Daimler, and VW vow to fight in green transport revolution” by Sören Amelang, Oct 12, 2016. ライセンス:“Creative Commons Attribution 4.0 International Licence (CC BY 4.0)” ISEPによる翻訳

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