ブロックチェーン – プロシューマーのための素晴らしく新しいエネルギーの世界?

ブロックチェーン技術は、エネルギーシステムを破壊し、エネルギーデモクラシーを加速させる力をもっています。

「エネルギー転換」:エネルギーデモクラシーとプロシューマーの勃興

世界のより多くの国々が、(集中型の)化石燃料から(分散型の)再生可能エネルギーをベースとするシステムへと「エネルギー転換」を開始もしくは計画しています。このいわゆる「エネルギー転換」は、そのキープレイヤーであるプロシューマーと共にエネルギーシステムの民主化を後押ししています。

集中的なシステムによってつくられた電力と熱を消費してきた市民のより多くが、アクティブなプレイヤーとなり、オルタナティブな再生可能エネルギーから熱をつくるヒートポンプや太陽熱システム、グリーン電力をつくる太陽光パネルを自宅の屋根の上に設置したり、コミュニティプロジェクトを通じて風力発電を設置しているためです。また、小型コジェネシステムは電力と熱の両方をつくることができます。

隣人同士がエネルギーを融通し合いたいと思っていたり、建物のオーナーが住人にエネルギーも供給するといった動きがあります。スマートホームでは、消費者が自分たちのエネルギーネットワークの管理者となり、スマートグリッドやいわゆる「モノのインターネット(IoT)」を通じて他の市場プレイヤーとつながっています。

プロシューマーの台頭にはいくつかのポジティブな影響があります。第一に、市民の投資を太陽光システムなどの新しい技術に回すことができるようになります。蓄電システムも考えられます。第二に、プロシューマーはエネルギー市場の機能性向上に重要な貢献ができます。プロシューマーは競争を強化し、発電容量とエネルギーミックスの多様化を促進します。これは市場の集中とエネルギーの寡占状態を打破し、卸市場の価格を引き下げる力があります。

デジタル化 - ITの巨人がエネルギー市場を掌握する

デジタル化は、エネルギー転換の最後のステップのカギであり、分散型の再生可能エネルギーをスマートグリッドに統合することで系統の安全性と効率を確保し、インテリジェントな供給と需要のマネジメントを可能にするために不可欠です。デジタル化は、エネルギーデモクラシーを加速化させ、プロシューマーはキープレイヤーとなって系統に優しい自家発電・自家消費、テナントモデル、電気自動車を含めた家庭内の効率的なエネルギーマネジメントを促進します。その結果、AppleやGoogleのようなITの巨人がエネルギー市場に参入し、電気自動車、スマートホーム/グリッド向けアプリケーションや機器の幅広い製品・サービスなどを提供し、さらには電力会社となって、「古いエネルギーの世界」に圧力をかけるのです。

「エネルギー転換」に揺り動かされる「古いエネルギーの世界」…次はブロックチェーンがこれを破壊するのか?

原子力と化石燃料による発電から再生可能エネルギーによる発電への転換と「デジタル化のメガトレンド」は、すでにエネルギー分野の大規模な構造改革を促し、勝者と敗者を生み出しています。これまで長い間安定してきたビジネスモデルはもう機能せず、新しいコンセプトが必要とされています。この嵐のような時代に、金融分野では「フィンテック」と呼ばれ、すでにかなりの成熟レベルに達しているブロックチェーン技術は、さらなる破壊をエネルギーの世界にもたらそうとしているのです。

ブロックチェーン技術は、ピアトゥピア・トランザクション(peer-to-peer transactions、P2P取引)と呼ばれる技術です。ネットワークの中にいる誰もが、銀行などの機関を経由することなしに、自分以外の全員と直接的に取引が可能です。取引記録はこれまでのように中央データベースに記録されることはなく、ネットワークに参加するすべてのコンピューターにバラバラに記録されます。これが、取引の分散型管理システムを実現するのです。

エネルギー分野に関して言えば、ブロックチェーンは分散型の取引管理とエネルギー供給システムを可能にします。これは、「発電-TSO-DSO-電力小売り-消費者」という現在の多層システムを劇的に変えるでしょう。ブロックチェーンは、(再生可能)電力を消費者に直接つなげ、電力会社、ブローカー、取引業者、取引所、銀行による仲介を不要にしてしまいます。いわゆる「スマートコントラクト」を通した直接的で自動化された相互作用が、量、品質、価格を個別に定義し、小規模なPVやコージェネと一般消費者をつなぎ、取引コストの低下とより効率的なプロセスがプロシューマーにとって将来有望なビジネスモデルを創り出すのです。

他の分野では、これはすでに現実になっています。ホテル、レンタカー、タクシーなどの中央集権的なビジネスモデルは、AirBnB、Uberなどの分散型で(個人的な)サービスを仲介するプラットフォームを提供する企業による圧力にさらされています。サービスは分散型で提供されるものの、仲介、取引、支払いはいまだプラットフォームによって集中的に管理されています。それが、簡単に言えば、自分の太陽光パネルの電気をお隣のトースターに供給することができるとすればどうでしょう。

エネルギー分野におけるブロックチェーン技術の可能性

エネルギー分野におけるブロックチェーン技術は、まだまだ設計段階です。しかし、エネルギーシステムのすべてを破壊するポテンシャルを持っています。電力、ガス、地域熱の供給、(再生可能)エネルギーの取引、電気自動車、系統運営、検針、請求書、伝統的なエネルギー会社の業務のすべて、または一部をブロックチェーンに任せることもできるでしょう。

仲介のない分散型取引と供給システム

伝統的な多層的エネルギーシステムの内部で中央集権的につくられる電力は、送配電網を通って産業消費者や各家庭に配られます。取引業者は電力卸市場で売買し、すべての関係者のすべての取引が金融サービスプロバイダー(銀行など)を通じて行われます。ブロックチェーン技術を使った異なるアプリケーションの統合は、分散的に管理される取引と供給システムを可能にし、仲介業者や電力会社は無用のものになる可能性があります。

コスト削減、スピード、柔軟性

仲介業者を通さない取引を可能にするブロックチェーンは、劇的なコスト削減効果をもたらします。

  • 仲介業者の取り分がなくなることによるコスト削減もしくは無料化
  • 検針、請求書発行などの運営コストの削減もしくは無料化
  • 銀行による取引手数料の無料化
  • 託送料金の削減
  • グリーン電力証書調達コストの削減もしくは無料化

手作業でこなさなければならなかった個々の手続きもスマートコントラクトで自動化され、手続きははるかに速くなり、すべてのシステムの柔軟性が増すでしょう。

すべてのエネルギーフローと商業取引を改ざんできないように分散型に記録する

ブロックチェーンによる分散型の取引記録のデータは、すべてのエネルギーフローとビジネス活動を、安全で改ざんできない形で保存することができ、これがブロックチェーンのもっとも重要な利点となります。取引は参加するすべてのユーザーのコンピューターに分散保存されるため、ユーザーたちは供給者と消費者の間でおこなわれる取引を「目撃」することになります。そのため、(改ざんされた)新しいデータは、分散保存されたオリジナルデータと合致しないため、公認された取引を後日改ざんすることはできないのです。

系統管理、アンシラリーサービス市場、バーチャル発電所

ブロックチェーン技術を用いた「スマートコントラクト」により、系統管理はより楽になります。スマートコントラクトは、需給をバランスさせるためにエネルギーのフローと蓄電について厳格に定められたルールに基づき、どの取引がいつ行われるかについてのシグナルをシステムに送ります。例えば、もし電力供給過剰の場合、「スマートコントラクト」によって余剰電力の蓄電が自動的に開始されます。逆に、需要が供給容量を上回る時は自動的に蓄えた電力を放出します。それゆえ、ブロックチェーン技術は、系統管理と蓄電に直接的な影響があるのです。「スマートコントラクト」は、アンシラリーサービス市場やバーチャル発電所でも用いるこができます。

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