ブロックチェーン – プロシューマーのための素晴らしく新しいエネルギーの世界?

マイクログリッド - レジリエント、省エネ、持続可能性

ブロックチェーン技術は、系統の効率向上、系統の安全といった「系統の近代化」の文脈の中で重要性を増しているマイクログリッドの発展において、根本的な役割を果たすことができるでしょう。分散型の再生可能エネルギーの発電容量のシェア拡大は「古い」送配電系統にとっては課題となります。従来の系統は非効率となり、あげく「持続不可能」になってしまうでしょう。マイクログリッドは、系統のすべての設備自身が管理と運営の手助けとなるため、はるかに弾力性があります。電力を長距離輸送する大電力会社のビジネスモデルよりも、地域で作られ、地域で消費される電力は、はるかに効率的で環境に優しいのです。

大手の電力会社も参加しているパイロットプロジェクトがいくつかあります。LO3 Energy社とConsenSys社のジョイントベンチャーであるTransatctiveGrid社が最近開始したブルックリン・マイクログリッドプロジェクトは、初のブロックチェーンを使った地産電力の隣人同士の直接販売プロジェクトです。技術的には、これはイーサリアム・ブロックチェーン(Ethereum Blockchain)をベースにしています。その目的の1つが、隣人間の再生可能エネルギー市場を作り出すことです。そのアイデアは、少数か、たった1つのソーラーパネルしか持っていない個別の家庭もエンドカスタマー市場に参加できるようにする、というものです。プロシューマーは、自家発電による余剰電力を、系統に固定価格買取制度を使って給電するのではなく、個人で市場で売買できるようになります。プロジェクト終了後には、すべての住民がパートナーとして参加するコミュニティ組織が運営を引き継ぐことになっています。

証書取引(CO2排出権、再生可能エネルギー発電源証明)

安全性の高い文書化は、所有者と発電源を示す明白な証拠と確実な記録として役に立ちます。ブロックチェーンが正確な所有者の履歴を記録することで、CO2排出権やグリーン電力証書の取引は飛躍的に発展するでしょう。これにより、これらの証明書は改ざんできなくなります。

ナスダック(NASDAQ)は、LINQ社が開発したソーラーエネルギーの証明書をブロックチェーンを使ってやり取りするサービスを紹介しました。ソーラーパネルは「モノのインターネット(IoT)」の機器につながり、発電・給電量を記録できるようになります。LINQユーザーは太陽光発電の電力の証明書を匿名で買うことができます。

資産管理

ブロックチェーン技術は、スマートメーター、スマートグリッド、太陽光パネルや他の発電設備のような資産の状態、所有者を文書化する記録簿として用いることで、資産管理を劇的に改善できます。風力発電設備などの技術的、経済的なデューディリジェンスは、ブロックチェーンのアプリケーションを用いることで、外部のデータ評価や証明の類が必要なくなり、根本的なスピードアップが見込まれます。

精算と決済(系統運営者)

ブロックチェーンの最大の恩恵の1つが、給電量と消費量の同期割当が明白であるということです。これは、系統運営者が精算と調整電源市場に支払うコストを大幅に削減できます。

電気自動車

ブロックチェーンは、電気自動車のインフラ開発に決定的な役割をはたすことができるでしょう。電気自動車は全国に充電設備を必要とするため、主な障害の1つが、特に公共スペースにおける充電設備における簡単な精算モデルの導入です。ブロックチェーンは、簡単で完全に自動化された精算システムを可能にできるでしょう。

ドイツの発電会社RWEとイーサリアム技術のスタートアップSlock.it社のジョイントベンチャーが開発したブロックチャージ(BlockCharge)は、電気自動車充電のプロトタイプです。支払いの承認と実行の両方を充電設備サイドで行なうことができます。充電に先立ち、ユーザーはネットワークに対して料金を前払いしておき、取引が終了すれば、口座から引き落とされます。このプロジェクトは、現在充電ステーションで主に使われている精算システムとは異なるシステムを採用しており、ユーザーは充電中に消費した電力量に応じて支払い、充電設備に接続した時間で支払うのではありません。考え方としては、ユーザーはマイクロ取引(Microtransactions)を通してお金を節約し、電力はより効率的に利用できるようになります。

スマート機器、モノのインターネット(IoT)、エネルギーのインターネット

未来は、「モノのインターネット」または「エネルギーのインターネット」の中にあります。何十億というスマート機器が繋がり、データを記録、応答、コミュニケーション、共有します。これらの機器は、自ら発電、売買が可能になります。ブロックチェーンは、すべての適合する取引とデータの実行と保存のための基礎技術となります。

サムスン社、Canonical社、Slock.it社の協力もこの方向を目指しており、サムスン社はスマートホーム、パーソナルモニタリング、スマートシティ、自動車にいくつかのインテリジェントなアプリケーションを提供しています。Canonicalは、Ubuntuをコアプラットフォームとするスマート機器を管理するアプリを提供しています。Slock.it社のブロックチェーン技術はこれらのアプリケーションの安全性を高めることに寄与しているのです。

消費者、プロシューマー、コミュニティプロジェクトのチャンス

ブロックチェーンを基礎としたエネルギーシステムは、消費者、プロシューマー、コミュニティのエネルギープロジェクトに多くの恩恵をもたらします。最も重要なことは、システム、運営、取引コストの削減は、彼ら全員に利益があるということです。

このコスト削減は、エネルギー消費者の直接または間接的なコスト低下につながります。また、数多くのより柔軟な電力販売オプションが増えることは、消費者の利益となります。ブロックチェーンをベースとした取引モデルはプロバイダーの恒久的な変化を可能にし、非常に短期間に新しい取引パートナーを見つけ、取引することができるようになります。ブロックチェーンは、発電設備とエネルギー消費者の直接取引、契約相手や風力や太陽光などの電源の詳細な特性情報を得ることを可能にし、エネルギー消費者にとっての透明性が高まります。エネルギー消費者は、彼ら自身のエネルギーミックスをこれまでは不可能だった高いレベルで決めることができるようになります。

ブロックチェーン技術は、プロシューマーの台頭をさらに加速させるでしょう。取引コストの低下と簡単な決済が、自家発電によるエネルギーの販売をより簡単で収益性の高いものに変えてくれるのです。これは、エネルギーに関わる他のサービスにも当てはまります。具体的には、テナント供給モデルやコミュニティエネルギープロジェクトなどの多くの参加者の調整が必要なモデルが考えられます。何百万の個人宅やコミュニティプロジェクトが自律的なエージェントとなり、最も高い額を提示する顧客との間での電力販売契約を自動的に行うことできるようになります。ブロックチェーン技術が発電設備の詳細な特性情報を提供できるようになることで、プロシューマーにも利益があります。それは、ローカルな、地域の(再生可能)エネルギーに対する需要の高まりを受け、「ローカルでグリーン」な電力の販売や広告がより受けいれられるようになるからです。プロシューマーは、マイクログリッドの重要性の高まりからも利益を得ることができるでしょう。

プライベートかパブリックなブロックチェーンか?(旧く)新しい寡占かエネルギーデモクラシーか?

ブロックチェーンには2つのタイプがあります。パブリックなものと、プライベートなものです。簡単に言うと、LinuxかMicrosoft Windowsかというような、オープンソース型とプロプライエタリ型です。パブリック・ブロックチェーンは、原則的にすべての人にオープンです。アクセスを管理し、制限する集中的な管理者はいません。そのため、オペレーターによる操作は不可能です。プライベート・ブロックチェーンは、特に銀行や証券取引所などの金融セクターで用いられています。「プライベート」とは、オペレーターがブロックチェーンとそのサービスへのアクセスを管理していることを指します。この目的が、伝統的なビジネス活動の保護、ユーザーへのサービスの代価の請求であることは明らかです。ブロックチェーンのアプリケーションはこれらを自動化し、サービスをほぼ無償で提供できてしまいます。

プライベート・ブロックチェーンは、ブロックチェーンが求める価値の「あるべき姿」にそぐわないことは明らかです。多くの場合、これは伝統的なやり方とわずかに異なるだけにすぎません。そのため、プライベート・ブロックチェーンのモデルは、主にエネルギー産業界の内部コストの削減に用いられ、消費者に対しては十分利益をもたらすことはないでしょう。しかし、エネルギーシステムがパブリック・ブロックチェーンのみに依拠することはできないのも明らかです。結果、パブリック・ブロックチェーンとスマートコントラクトの組み合わせこそが、考えられるソリューションになります。「イーサリアム」は、その中で最も知られたものです。

エネルギーセクターにおける競争でどんなブロックチェーンが勝つかを述べるのは時期尚早でしょう。大手電力会社やIT企業もこのゲームに参加しているため、(旧型の、もしくは新しい)寡占化が進む危険性はあります。ブロックチェーンが自動的にエネルギーデモクラシーを促進することはないのです。現在の独占、寡占状況が、新しい勝者に取って代わられるだけになることもありうるのです。

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