10のチェックポイントで見る2016年のドイツ電力市場

今年もドイツのシンクタンク「アゴラ・エネルギーヴェンデ」が、ドイツの昨年の電力市場の特徴を年明けすぐに発表しました。レポート「電力分野におけるエネルギー転換:2016年の状況」をもとに、10のチェックポイントで2016年のドイツ電力市場で再エネになにが起こっているのかを見ていきましょう。

2016年の再エネは、2015年の記録尽くめの1年に比べて、かなり落ち着いたものとなっています。ベースとなる再エネの大きな流れはそのままですが、年間を通しての天候の差などで、風力や太陽光発電の発電量があまり伸びなかったことによります。

1. 再エネによる発電量わずかに増加、全需要比32.3%

ドイツの総発電量は、昨年を上回って648.1TWhと過去最高を更新しました。これは、日本の総発電量のおよそ3分の2に当たります。このうち再エネによる発電量は191.4TWhと、2015年に比べて4TWh増加しました。これは、ドイツの総電力需要の32.3%です。昨年の31.5%を0.8ポイント上回りました。昨年、風力発電の急拡大などにより前年比4.3ポイントの大飛躍だったことと比べると、かなり落ち着いた増加です。

解説:

再エネの伸びが低かったのは、後述するように風力発電、太陽光発電が奮わなかったことが最大の理由です。これは2015年があまりに天候に恵まれ過ぎていたことの反動ともいえます。政府の目標は、2025年に再エネ電力の割合が40〜45%の間ですから、達成はそれほど難しくないと思われます。

2. 電力使用量はわずかに下落、一方、経済成長+1.8%

2016年にドイツで使用した電力量は592.7TWhで、前年より2.4TWh、割合でマイナス0.4%とわずかに減少しました。一方で、年間の経済成長は1.8%を遂げています。しかし、エネルギー効率化の目標は、2020年までに2008年比で10%の電力使用量を減らすというものです。これを達成するためには昨年はさらに8TWhの削減が必要だったということで、目標達成はかなり厳しい状況です。

解説:

昨年も書きましたが、ここで重要なのはエネルギー消費と経済成長のデカップリング(分離)です。よく日本の経済団体などが、経済成長とエネルギー消費の増加はセットとして主張しますが、ドイツではエネルギーの効率化と着実な経済成長は両立しています。いまだに経済成長に合わせて電力消費が増えるというモデルを掲げ続けている日本政府もはっきりいって遅れています。

3. 従来型エネで天然ガスの発電量が急増、再エネは太陽光・陸上風力が減少

一昨年は、原発、化石燃料、いずれの従来型の発電量も減りましたが、2016年には天然ガスだけが大幅に増加しました。前年比のマイナスは、原発による発電が6.9%、石炭が7.7%、褐炭が4.5%です。ところが、天然ガスは15TWh以上、16.5%のプラスとなりました。

一方で、再エネ発電も一昨年とは様相が違ってきました。風力による発電量は、2015年の79.2TWhから2016年の79.8TWhへと微増に留まりました。しかし、洋上風力が8.3TWhから13.0TWhへと急激に増加したのに対して、陸上風力は70.9TWhから66.8TWhへとかなり減らしました。また、太陽光発電は、38.7TWhから38.3TWhへと微減しています。

解説:

石炭と天然ガス発電の増減の大きな差は、一義的には原料の値段によります。昨年は天然ガスの価格が大きく下落していたため、天然ガス発電が有利となったというわけです。一方で、風力と太陽光に起きたことは、単純に天候の影響です。一昨年は、発電に非常によい風が吹き、昨年は日照時間が平均より低かったとまとめられています。

4. CO2の排出量はわずかに増加、電力部門では減少

CO2の排出は前年の9.08億トンから9.16億トンへと、わずかに上昇しました。割合にして0.9%です。一方、電力部門だけを見ると、500万トン、1.6%の削減です。これは4年連続の減少となります。しかし、ドイツの2020年時点でのCO2削減目標は1990年比40%、2030年時点では55%というもので、達成は非常に厳しいと見られています。

解説:

2016年に電力部門のCO2削減が進んだ大きな要因は、石炭による発電が天然ガス発電に取って代わられたことです。2020年までにさらに2.7GWの褐炭発電所が閉鎖される予定ですが、それだけでは1,100〜1,250万トンの削減にしかならず、決定的な改善策にはつながらないようです。

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