10のチェックポイントで見る2016年のドイツ電力市場

8. 再エネのシェア86.3%で記録更新

2015年8月23日の記録83.2%を2016年も更新しました。2016年5月8日13時に再エネ電力のシェアがすべての電力需要の83.2%になって過去最高を記録しました。この時点での総需要は日曜日のため60GWと少なく、この需要を主に太陽光発電、風力発電の順でカバーしました。再エネの発電のおかげで市場価格は2016年の最低となる1kWh当たり1.6ユーロセントまで下落しています。

当日のマーケットには、太陽光と風力発電による電力が大量に入ってきて、日本円で2円を切る価格となりました。こんな価格では従来型の発電は競争力がなく、対応が不可能でシェアを大きく減らしました。前日の段階で天気予報などから発電予測と需要予測はできており、従来型発電は発電量を下げることにしていたはずです。こんな低価格がわかっていれば、発電すればするほど赤字になることは自明だからです。前項の繰り返しになりますが、ここに「ベースロード電源」の発想はありません。価格の安いものから売れていくまさしく「メリットオーダー効果」であり、市場がどの電力を使用するかを決めるのです。

一方で、再エネ電力が最低のシェアとなったのは、2016年1月21日17時でした。

冬の木曜日の電力需要は高く75GWでした。これに対してすべての再エネを合わせた発電能力は8.42GWにすぎず、シェアは11%にすぎませんでした。一方、電力のスポット価格は急上昇して、7.7ユーロセントと10円近くにまで跳ね上がっています。従来型発電の所有者はここぞとばかりに発電したに違いありません。鬼の居ぬ間に洗濯でしょうか。

解説:意味をなさない「ベースロード電源」

再エネ電力の最高記録と最低記録を見ることで、再エネの割合が増えると電力価格が下がり、逆に再エネの割合が減ると電力価格が下がることがよく分かったと思います。安い再エネ電力をいかに捨てずに無駄なく使うかが重要なのです。ベースロード電源という発想は、非現実的な考え方なのです。

9. ドイツ国民の圧倒的多数がエネルギー転換を後押し

毎年行っている再エネへのエネルギー転換に対するドイツ国民の姿勢を見る世論調査では、今回も圧倒的多数がエネルギー転換を支持しているという調査結果となりました。エネルギー転換に対して、「非常に重要」と答えたのがおよそ57%、また「重要」と答えたのが36%で、合わせて全体の93%がエネルギー転換支持という結果でした。特に、「非常に重要」と答えたのが、一昨年の50%から7ポイントも伸びたのが特徴です。「非常に重要」「重要」の合計は前回90%で、今回3ポイントプラスです。

ここでいうエネルギー転換とは、ドイツ語のEnergiewende(発音は「エナギーヴェンデ」を日本語に訳した言葉のうちのひとつです。前にもお話しましたが、Energiewendeは革命に近い意味です。Energieは字面通りエネルギーですが、wendeは東西ドイツの統一にも使われた言葉です。「世の中がひっくり返るくらい凄いこと」といっても良いでしょう。

10. 2017年の展望 〜石炭と原発やや減少、再エネ続いて拡大

再エネの展望

風力発電は今後さらなる拡大が予想されています。一世代前のFIT制度(EEG2014)のもとで計画された陸上風力のプロジェクトが多数控えていることに加え、洋上風力も大きく伸びそうです。陸上、洋上を合わせた風力発電は年間4GWのレベルに十分到達するとみられています。

一方、太陽光はやや厳しい状況です。買取価格や電気料金などを考慮すると、すでに自家消費モデルの方がメリットの出るケースが増えそうです。太陽光の年間導入量は1.5GWあたりが現実的だとしています。

従来型発電の展望

2017年に、合計4GWの従来型発電施設が運転停止となります。その中には、年末までに閉鎖となるドイツ最大のグントレミンゲン原発が含まれています。この原発は1.334GWの巨大出力を有しています。この他、フリマースドルフの2つの褐炭発電所が安全準備停止(非常時には運転することもあるという意味だと思われます)に入り、その他5つの石炭発電所(合計2GW)が運転を終えることになっています。

再エネが拡大しているため、これらの運転停止はドイツのエネルギー安全保障上、何の問題もないというのが、アゴラの評価です。さらに、これらの発電設備は柔軟性に欠けるため、運転停止は柔軟性の向上につながるとしています。

政策上の変化と展望

先ほどにも少し書きましたが、2017年1月1日から新しいEEG2017が発効することになりました。ドイツの場合、FIT制度とはいえなくなってきているので、あえてそのままEEG(再エネ法)を使います。風力、太陽光など、それぞれの再エネの発電源別の新しい導入制限が実施されます。

また、入札制度が風力やバイオガスでも行われる予定です。これによって、再エネ導入のコストが引き続き下落することが期待されています。

さらに、9月に連邦議会選挙が予定されていて、エネルギー政策についても国民の政治的な決定が下されることになります。

解説:変化の年に未来を照らす再エネ

エネルギーでは新しい再エネ法が施行され、政治全体では連邦議会選挙が行われることもあって、ドイツは転換の年となります。再エネは、法律の後押しを離れながら自立していき、主力エネルギーの道を着々と進むことになります。そんな中でアゴラ・エネルギーヴェンデを含むドイツの主要なシンクタンクは、どれも電力システム全体の「柔軟性」の必要性を強調しています。細かな内容はここでは繰り返しませんが、「柔軟性」は、単なる化石燃料による発電施設による調整ではなく、送電システム、エネルギー貯蔵などICTを駆使した全体システムで担保するというところを忘れてはいけません。

一方で、電力だけでエネルギーを語る時代は完全に終わったことも特徴的です。電力だけでなく、最終的なエネルギーの形態でより大きなシェアを占める熱や交通を含むすべての分野が変革の時代に突入しました。

特に、交通分野での電気自動車の拡大は目を見張るものがあります。これまでは、私も、まず熱への取り組みへ進んでからと思っていたのですが、案外早く、交通手段の燃料を地域で生産する時代が来るかもしれません。再エネ電力が急激に増えて、マイナスの価格が珍しくなくなったドイツこそ、余った格安の電気を地域の電気自動車に使って、CO2フリーで自給自足するモデルが実現可能になってきたのです。

いよいよ、エネルギーの地産地消は夢物語ではなくなるのです。

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日本再生可能エネルギー総合研究所 メールマガジン「再生エネ総研」第79号(2017年 1月10日配信)、第80号(2017年1月13日配信)、第81号(2017年1月16日配信)より改稿

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