クルマを不便にし、道路を暮らしの空間に(書評)

仕事がら全国各地の地方都市をよく訪れるが、その地の風土の面白さの前に「廃れ感」が気に掛かる。金太郎アメのようなファーストフード店やコンビニに消費者金融が並び、そのスキマを時間貸し駐車場とシャッター街が埋める。

「ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか」 村上敦著/学芸出版社

そうした日本の地方都市に対して、欧州の地方都市はなぜあれほどに人で賑わい豊かさを感じるのか。誰もが感じる疑問に、本書はドイツと対比しつつ真正面から切り込む。

地方の中核都市として同規模の青森とフライブルグを比較しつつ、住宅とまちが連動して空いていく日本の住宅政策の失敗を指摘する。消費財のように住宅を作り続けることを奨励し、空き家を抑制する都市政策もない。その結果、日本の都市は人の半生の寿命で衰退する。これでは持続可能な都市どころか、消滅都市も現実味を帯びる。

著者が前著「キロワットアワー・イズ・マネー」で提唱した考え−地域での省エネ・再エネ投資が地域経済を活性化する−に加えて、本書では「キロメートル・イズ・マネー」を提唱する。マイカー依存社会から徒歩・自転車・公共交通中心に切り替えると、外部に流出していた移動費用が地域内で循環し、地域経済を活性化するという考えだ。

さらに著者は「渋滞は問題ではなく」クルマをもっと不便にし、道路を暮らしのための空間に取り戻せと主張する。日本人には「過激」な主張だが、ひと中心のまちづくりは賑わいの要だ。ドイツの地方都市との差を見れば一目瞭然だろう。

日本の地方都市の現実は厳しい。筆者が指摘するとおり、人口減少で再投資の余裕が無い中、地方は高齢化、低教育化、低所得化・貧困化が加速する。住宅政策と都市計画と交通政策の3つを大胆に転換し統合する必要がある。行政の縦割りが強烈な日本では難しいが、もはや猶予はない。

私たちは自分たちのまちを再生できるのか、突きつけられた課題は重い。

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日刊ゲンダイDigital:明日を拓くエネルギー読本「クルマを不便にし、道路を暮らしの空間に」2017年10月4日より転載