新潟発、市民政治の極意書(書評)

新潟といえば、田中角栄を生んだ保守王国である。田中が創った電源三法で日本中に原発が54基も建設され、新潟には世界最大の柏崎刈羽原発が建つ。他方、日本初の住民投票で巻原発を撤回に追い込み、プルサーマルも刈羽村の住民投票で取りやめさせた。そして今、福島第一原発事故を引き起こした東京電力の「生命線」が柏崎刈羽原発であり、その再稼動の是非は選挙のたびに最大の争点となる。

「市民政治の育てかた 新潟が吹かせたデモクラシーの風」佐々木寛著/大月書店

その新潟で、2016年に参議院選挙、知事選挙と二度も「市民政治」が勝利した。本書はその市民政治の活きた記録である。

古典的なアカデミズムでは「学問」と「政治」の両方に関わることは禁じ手だったが、著者は、政治学者でありながら市民連合の代表として選挙の当事者も務めた。両方に関わることで「間違いなく広くものを見ることができる」と断言する。その意味で本書は、市民政治の極意書とも言える。

今回の衆議院選挙でも、臨時国会冒頭での解散とその後の希望の党誕生・民進党の事実上の解党など野党が混乱する中で、新潟はいち早く野党・市民連合の統一候補でまとめることに成功している。

著者は、新潟市民が生み出したご当地電力のリーダーでもある。エネルギーや巨大技術と政治を専門に研究していた著者は、デンマークの例にも触れながら、地域分散型エネルギーが社会全体を民主化するダイナミズムを生み出す可能性を強調する。

古今東西、「歴史は周縁から変わる」という。原発に翻弄されてきた新潟から、エネルギー転換と政治の転換、「エネルギー・デモクラシー」が始まるかもしれない。