「下り列車」に乗り換えて見えてくる幸福なニッポン(書評)

東芝、タカタ、神戸製鋼、日産と不祥事が続き、高品質なものづくりで世界をリードしてきたはずのニッポン株式会社の屋台骨を揺るがしている。大企業だけでなく、「堅い仕事」の代名詞であるお役所も、モリカケ問題や日報問題などで記録も記憶もないと徹底的にシラを切り通して、国民からの信頼は地に落ちた。

「経済成長なき幸福国家論」平田オリザ、藻谷浩介著/毎日新聞出版

彼らに共通するのは「依存」だ。組織に依存し、権威に依存し、高度成長期や果ては戦前の勇ましかった時代の「ニッポンを取り戻す」と妄想に依存して、事実やルールさえ歪める。日本がもはやアジアで唯一の先進国ではなく、人口や経済が縮小してゆく現実を受け入れられない「寂しい人たち」なのだ。

本書は、「下り坂ニッポン」で軽やかに活躍する2人が、そうした「寂しい人たち」さえも思いやりながら交わした対談録だ。文化・演劇で地域再生に取り組む「現代の宮沢賢治」こと平田オリザ氏、相方は日本中を津々浦々くまなく訪ね回ってきた「現代の宮本常一」こと藻谷浩介氏。

その2人が「足で稼いだ実感」をもとに、魅力的な「過疎の町」を次々と紹介する。例えば、女性が昼間から1人でビールを飲めるという理由で女性漫画家が移住先に選んだ城崎温泉、小学生全員が子ども歌舞伎を授業で習う岡山県奈義町、写真甲子園で移住者を引きつける北海道東川町。

そうした魅力的な地域社会への移住での心配ごとのひとつは、自分にあった仕事があるかだが、専業ではなく「複業」で、分業ではなく「一人多役」を担えば、どこでも楽に豊かに暮らせる。何よりも、心豊かに生きるには、自己決定力が重要だと説く。

これまでの東京中心に向かう「上り列車」を「下り列車」に乗り換えると、その先に希望が見えてくる。「寂しい」どころか、心豊かで幸福なニッポンの姿ではないだろうか。

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日刊ゲンダイDigital:明日を拓くエネルギー読本「「下り列車」に乗り換えて見えてくる幸福なニッポン」より転載