デンマークに見る現代エネルギーデモクラシーの源流

共創のダイナミズム

飯田 社会そのものが複雑化しているので社会の課題もますます複雑化している。何が問題で何が問題でないのか、どこが対立しているのかいないのか。複雑化・多様化しているなかで、政府の役割もますます難しくなっていくし、できることも限られていく。

そういう意味では自分たちが政府に要求するだけじゃなくて、自分たち自身もかかわって一緒につくっていくというモードを生み出すことが必要というのは時代の潮流としてあると思います。

さきほどエネルギー耕作型時代が現実になりつつあるという話をしましたけど、やっぱりデンマークのあの分散型エネルギーの背景には、自分たちの使うエネルギーは自分たちでつくるという、それはもともと自分たちのもっていた権利であって、それを自ら実践することで取り返していくという民主主義の政治的実践という意味合いがある。

そういった動きがあらゆるテーマで起こりつつあって、エネルギーの分野では経済的にも社会的にもそのインパクトが非常に大きい。エネルギー分野はもっとも集権的で独占体質が強い産業構造があるなかで、いまや自分たちで生み出すことができる自然エネルギーの技術があり、それを支える政策がある。そして、実際にプロジェクトをはじめると、目に見えて地域でお金がまわりはじめて、雇用が生まれ、社会の自治感が高まる。

日本全体でご当地エネルギーをつくり出す活動をしていますけど、最初は本当にみんな素人というか、それこそ酒屋さんとか、かまぼこ屋さんとか、学校の先生とか、牧師さんとか、お坊さんとか、いろんな人が最初はなにもわからないなかで、教育も座学というよりラーニング・バイ・ドゥーイングというか、事業づくりを実践することによって、本当に生きた知を自分たちで手にする。同時に自信を持って、なおかつそのネットワークが自己組織的に広がっていて、それがポジティブに社会を動かそうとするダイナミズムを生み出す。

学校教育的なものもそれはそれで必要なのですが、自分たちで知を生み出しながら自ら学んでいく、そういったものがいまのエネルギー変革をつくっていく上ではすごく重要なことだと感じています。

中島 サムソ島と同様の経験を日本の各地で展開していくということですね。

飯田 そうですね。

中島 その時の推進者というのは、やはり地域の名主のような方がリーダーシップを発揮するのでしょうか。

飯田 それはすべての地域で違っていて、また、出会い方によっても違ってきます。行政が最初に火をつけることもあるし、会津電力であれば佐藤彌右衛門さんのような方が中心でリーダーシップをとっています。長野県上田市で「あいのりくん」という太陽光発電の事業モデルを進めてきた40代の女性はもともと小僧寿司の店員をやっていた人だし、小田原は老舗のかまぼこ屋さんだし、サムソ島のソーレン・ハーマンセンはもともと高校の先生でした。

最初のスタートアップは本当にいろいろな偶然ではじまって、そこで集った人の中で対話を繰り返していくと、自ずと中心になる人、技術面で協力する人、調整に汗をかいてくれる人などが浮かび上がってくる。あるいは最初はがんばっていたけどだんだん離れていく人もいたりして、いろいろな人たちの組み合わせでだんだん変化していくというか。100のご当地電力があれば、100の物語があるというか。

中島 もちろんそこでの場の形成の仕方とか、リーダーシップの発揮の仕方というのはもうまとめられて、共有されているわけですね。

飯田 そうですね、形式知にできる部分は『コミュニティパワー エネルギーで地域を豊かにする』という本にまとめています。

地域によっては事業からスタートすることもあれば、ゆっくりとしたワークショップからはじめることもありますし、本当にその都度「こうすれば前にいくのではないか」っていうサポートを続けています。まあ、正解はないのですが、前向きなエネルギーを生み出すように丁寧にサポートしています。

中島 それがみんなに迅速に共有できるようなシステムができるといいですね。

飯田 そうですね。

中島 デンマークでも、あるひとつの成功体験をみんなと共有するシステムをつくることが重視されています。日本の場合だと、自治体同士でノウハウをなかなか見せようとしない感じがあります。地方も自治体の活動だけに期待するのではなく、地域のコミュニティが主体となり、むしろ行政を動かして行く、ご当地得られた経験やノウハウを地域間で共有するようになってくると良いと思います。例えば北海道の経験を九州に共有できるようになってくると、全体の動きも加速していきますよね。

飯田 そうですね。少しずつそういう動きも起こりつつあって、それこそ会津電力とかは有名になってきているので、会津電力に教えを乞いに行く人たちもいるし、彌右衛門さんを講師に招いて学びはじめる人たちもいます。

すでに先行して取り組みをはじめている地域の近くで新たにはじめる地域が現れると、それらの地域同士で学び合うこともできるので、すべての地域にISEPが行かなきゃいけないというわけでもなくなってきているので、今後もさらに加速的に広がっていくと思います。

あとは、基本的なツールを整備して共有するシステムというか、そういう部分をもう少しサポートしたいと考えています。

中島 そうですね。共有について、デンマークでも競争がないわけではなくて、競争は普通にあるのですが、日本と違うのは競争があると日本はやっぱり隠しますよね。自分たちの手のうちは見せない。

デンマークでは、全部開示したうえで、その時点よりもさらにいいものをどうやってつくるかを考える。オープンにした上でさらにいい意味での競争がはじまります。どうやって他よりももっといい施設、いい制度をつくるか。だからよりポジティブなエネルギーを感じますよね。

飯田 そうですよね。誰が何をやっているっているという情報をオープンにしながらモノゴトを進める透明性はデンマークの特徴ですね。

研究分野でも同じようなことがあって、日本の研究者は同じような研究をお互い背中を向け合ってやっていたりしますけど、本当に特徴のある成果を出す研究者たちは、基本的な知見を引用しながら自分たちのオリジナルをつくり出している。すごくいい形のオープンイノベーションというか、そういった環境もすごく学べるというか、学ばないといけないところですよね。

− 最後に一言ずつお願いします。

中島 いろいろとありますが、有志が集まって行動を起こせば小さな変化は必ず起きる。でもうまく応用できるモデルがないと、単にエネルギーを発散させて終わってしまう。ですから具体的な形に結び付けられるようなデンマークの経験などが参考になればいいと思います。課題はたくさんありますが、最後まであきらめずに持続性をもって取り組んで行けば、いつかは打開出来ると確信しています。

飯田 改めて、歴史を振り返ってみると、いろいろなことが今日までつながっていて、そして、それが未来のダイナミズムにつながることを感じました。さらに、変化のなかで一人一人が果たす役割は昔もいまも大きく、ほのかに生まれる変化を大切にして、より大きな良い変化を生み出していきたいと思います。

(編集・構成/古屋将太)

 

ページ: 1 2 3 4 5