ひとりぼっちの抵抗が世界を変えた − スウェーデンの16歳の環境活動家

16歳のスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリがひとりではじめた「気候のためのスクールストライキ」は、瞬く間に世界の若者運動として広がっていった。彼女は大人たちに何を問いかけているのだろうか。

国会前での座り込み

Photo: Anders Hellberg

グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)は、16歳のスウェーデンの高校生だ(「長靴下のピッピ」に少し似ている)。2018年8月20日、彼女は、温暖化問題の重要性と、それを(彼女から見れば)無視するようなスウェーデン政府に抗議するために、学校を休み、ストックホルムの国会議事堂前で、2週間、毎日座り続けた。彼女の行動は、「Skolstrejk för klimatet(気候のためのスクールストライキ)」という小さなプラカードを掲げていたものの、道行く人から話かけられたら話すという寡黙なものだった。

そのような彼女のひとりぼっちの行動が、“Fridays For Future(未来のための金曜日)”という運動となって世界中に燎原の火のように広まった。2019年1月には、ドイツでは3万人の中高生が、ベルギーでは1万2,500人が、スイスでは15の都市や町の学校で登校拒否が起きた。そして、世界中の若者に行動を呼びかけた3月15日の金曜日には、125ヵ国で160万人の子供や若者たちが学校をサボった。

彼女は、世界の主要な政治家や経営者が集まるスイスのダボス会議でも講演し、TED Talkでの講演は、200万回以上視聴されている。2018年3月にはノーベル平和賞にノミネートもされた。これらすべてがたった8ヶ月の間に起こった。

彼女の主張

彼女の主張は、(1)気候変動は人類にとって極めて深刻な問題である、(2)しかし、今の大人たちは、何ら必要な対策をとろうとしない、(3)地球に優しくしましょうとか、循環型社会を作りましょう、などの上っ面だけの言葉や対策では意味がない、(4)自分は、スウェーデン政府が公平性を考慮した数値目標(毎年CO2排出量を15%程度削減)を打ち出さないかぎりストライキを続ける、などだ。

当然、彼女への批判もある。最も多いのは、「まず学校へ行って勉強しなさい」というものだろう。これについては、みなさんがそれぞれ考えて欲しい。もし、あなたが子供を持つ親で、息子や娘から「あなたたちではなく、自分たちの未来が懸かっている」「宿題をやっていないのは、あなたたち大人だ」と言われたら、どう答えるだろうか。

ただ、彼女の4番目の主張の意味することを正確に理解して、真剣に考えている人は、Fridays For Future や環境NGOに関わっている人の中でさえ少ない。メディアもほとんど伝えない。毎年、CO2排出量の15%程度を削減するというのは、多くの先進国や日本政府などが掲げていて、日本の環境NGOも後押ししているCO2排出量を1990年比で2050年に80%程度削減するという目標ではまったく達成できない。そして日本の現政権は、この2050年80%程度削減という目標さえ、真面目に達成しようとしていない。その位、現実とのギャップは大きい。

彼女が問いかけているもの

温暖化問題は、1896年にスウェーデンの科学者であるアレニウスが、二酸化炭素濃度が増加すると気温が上昇することを示したことから始まった。それ以来、多くの人が懸念を示し、多くの会議が開かれ、多くの言葉と時間が費やされた。しかし、彼女の言動ほど、多くの人の心を動かし、具体的な行動に結びつけたものはなかった。

実は、彼女の存在は、一般市民よりも、温暖化問題に長く関わってきた研究者や環境NGOの心にグサリと突き刺さっているように思う。なぜなら、今まで自分がやっていたのは何だったのだろうか、自分は彼女ほどこの問題について真剣ではなかったのではないか、これから何をすれば良いのか、と自分の過去や未来を厳しく問わざるを得ないからだ。

恐らく彼女にも矛盾や葛藤がある(マザーテレサにだって矛盾や葛藤はあったと思う)。それでも、彼女には、それを乗り越えてリーダーシップをとり続けて欲しいと願う。大人は、自分も含めて、「現実」とか「大人の事情」とか「汚れちまった悲しみ」とかいうものに、ぐちゃぐちゃにまみれている。それだからこそ、大人の言い訳なんて絶対に理解しないで、大人たちが作ったシステムにNoを言い続けて欲しい。