ファイナンス・スタートアップ ベターベストが小規模投資家とグリーンエネルギープロジェクトをつなげる

エネルギー転換の進展の中で新たな機会が生まれ、さまざまなスタートアップが新たなビジネスモデルを構築し、産業構造を変革しつつあります。クリーンエナジーワイヤーのスタートアップインタビュー連載第5回「ベターベスト」の翻訳記事をお届けします。


クリーンエナジーワイヤーは、ドイツのエネルギー転換がビジネスに与える影響について取り上げます。世界第4位の経済大国ドイツで進行中の大変動を紹介し、脱炭素に向けてあらゆる産業の破壊をめざすスタートアップたちを取り上げ、連載しています。第5回は、グリーンファイナンスのプラットフォームである「ベターベスト(Bettervest)」です。

クラウドのためのエネルギー:ベターベストは、小規模投資家とクリーンエネルギープロジェクトを直接つなぎます。

クラウドのためのエネルギー:ベターベストは、小規模投資家とクリーンエネルギープロジェクトを直接つなぎます。

自然エネルギープロジェクトの立ち上げもしくはエネルギー効率化の資金の調達は、特に途上国も含めて、小規模な企業にとっては非常に困難な仕事です。一方で、多くの小規模な民間投資家は、環境面で疑問のあるプロジェクトに貯金が使われることを避けたいと考えているものの、代替となる明確な選択肢を見つけ出すこともなかなか難しいのが実情です。

ドイツのスタートアップであるベターベストは、こうした「投資ギャップ」を埋めたいと考えています。従来の銀行から見過ごされてきた貸し手と借り手のグループを集め、投資家がもつ比較的小規模な額をまとめ、収益性のある排出削減プロジェクトに共同出資することを可能にする仕組みです。

金融首都であるフランクフルトでのスタートアップコンテストから生まれたこのクラウドファンディングプラットフォームは、当初はドイツ国内のエネルギー効率化プロジェクトに重点を置いていました。しかし、現在ではアフリカ、インドなどのエネルギープロジェクトに資本を提供するまでに発展しています。

ベターベスト創業者のパトリック・マイナルズ氏は、思いがけない収益率、電力の安定供給を当然のものとするドイツの市民、従来の銀行と競合しない理由などについて、クリーンエナジーワイヤーに語りました。

企業概要

      • ベターベストは、エネルギー生産やエネルギー効率化のプロジェクトに民間投資家が資金を投入し、リターンを得ることを可能にするクラウドファンディングプラットフォームです。小規模な投資がまとめてプールされ、既存の企業、自治体、その他の大規模エネルギー需要家のエネルギー効率化プロジェクトに資金が投下されます。エネルギー利用を減らすことでしっかりと投資リターンが得られる需要家が対象となります。
      • ベターベストは、ドイツの金融の中心地であるフランクフルトでのビジネスアイディアコンテストの受賞者で、コンサルタント/未来学者のパトリック・マイナルズ氏の独創的な発想の産物として、2012年に設立されました。
      • ベターベストは、「民間投資家にエネルギー効率化市場へのアクセスを提供する」プラットフォームとなることを目指していると述べます。同社は、投資金額に応じた報酬と契約期間の取扱手数料によって自社の資金調達をおこなっています。

なぜベターベストが重要なのか

      • ベターベストは、これまで完全に無視されてきたエネルギーファイナンスのニッチを占領していると述べています。同社が資金調達を支援してきたプロジェクトの多くは、投資コスト100〜200万ユーロの幅にあり、多数の小規模投資家(特に途上国)にとっては大き過ぎ、大規模な機関投資家には気付かれない範囲にあります。
      • ベターベストは、50ユーロからプロジェクトに参加できるような、小規模な民間投資家によるエネルギーファイナンスの世界を切り拓きたいと考えています。小規模投資家に関する規制に適合するため、投資額は10,000ユーロが上限となっています。
      • 同社のビジネスモデルは既存の銀行に干渉しないことから、彼らを競合とは考えていないと述べています。

ベターベストへのインタビュー

クリーンエナジーワイヤーは、スタートアップコンテストで受賞した後、2012年にベターベストを立ち上げた創業者のパトリック・マイナルズ氏にインタビューをおこないました。

−− クリーンエナジーワイヤー:銀行融資のような多くの既存の資金調達とベターベストは何が違うのでしょうか?

パトリック・マイナルズ:私たちは、2者の間を仲介する役割を担っています。まず、あなたや私のような民間の小規模投資家で、この方々は50〜10,000ユーロほどの比較的小規模な金額をエネルギー関連のプロジェクトに投資したいと考えています。一方で、そういったプロジェクトを実施する太陽光発電事業者やエネルギー効率化サービスのプロバイダーなどの企業がいます。彼らは、エネルギーを生産もしくは節約することで収入を生み出し、それがクラウドで再分配されます。顧客にとって、ベターベストは既存の銀行が相手にしてこなかった範囲のプロジェクト全般にアクセスを提供する存在です。

これらのプロジェクトでは、比較的高いリスクをとるため、資金調達にも高い利率がかかります。私たちはいつも投資家たちにこの点を強調しています。また、これらのプロジェクトは常に炭素排出を削減しているため、環境の観点からもきわめて大きなインパクトを生み出していることも伝えています。さらに、途上国の遠隔地にエネルギーを提供するプロジェクトなどでは社会的に大きなインパクトをもたらしています。

そのため、これは単純な金融投資以上のものであると言えます。伝統的な金融業界でも持続可能性をより重要なトピックとして扱いはじめているのは良いことですが、それでもニッチに留まっているのが実態かと思います。

−− 典型的なプロジェクトはどういったものなのでしょうか?

私たちのプロジェクトの多くは、例えば途上国で電力系統の接続ポイントまで遠く離れている地域といったような、エネルギー供給が不十分なエリアに注力しています。オフグリッドと呼ばれるこれらのプロジェクトは、それまでディーゼル発電機などに依存していた場所で、数百キロ離れたところから汚染源にもなる化石燃料をコストをかけて輸送することなく、安定した供給を提供することをめざしています。多くの途上国では初期投資のコストが高いため、ソーラーエネルギーへと電力供給を切り替えるハードルが高く、一見するとディーゼル発電機の方がはるかに経済的になってしまいます。

しかし、太陽光発電の長期的なコストはさらに安くなります。もはや燃料を買う必要はなく、メンテナンスコストもより低くなり、運営もより手ごろな価格におさまります。こうしたエリアの人々の多くは、導入することはできるのですが、そもそも売ることができないのです。そこで私たちのクラウドファンディングのアプローチが役割を果たします。私たちは、プロジェクトの立ち上げを支援し、ローンの返済とリターンを支払うのに十分なお金を生み出します。

−− これらのプロジェクトは、非常に高いリターンがあると同時に、より大きなリスクもあるということで、銀行が日常的におこなっている通常のコスト便益分析と同じように見えます。もし銀行も資金を投入するということになれば、彼らもプロジェクトを選定することになるはずですが、そうなっていないのはどうしてなのでしょうか?

一般的に言って、従来の金融市場のアクターは平均以上のリスクを回避する傾向があります。さらに、私たちのプロジェクトの規模は小さくなる傾向があり、個別のローンから得られるお金は大きくありません。この「投資ギャップ」は、マイクロファイナンスと呼ばれるスキームよりも大きく、なおかつ世界銀行がファイナンスするような大規模な政府主導のプロジェクトほどのボリュームはないプロジェクトに関係します。開発協力の関係者にはおなじみの問題です。

100〜200万ユーロといった金額を扱うアクターは比較的少なく、私たちは現在ここに注力しています。そのため、私たち自身は従来の銀行と競合するとはまったく考えていません。むしろ、あるターゲットグループに対して補完的なサービスを提供するプロバイダーであると考えています。

−− では、ベターベストは銀行から見過ごされがちなグループをターゲットにしているということでしょうか?

その通りです。私たちの投資家は、限られた額のお金しか投資できない小規模アクターがほとんどです。それらの投資家の中には、リターンを最大化するために投資を多様化したい人もいれば、銀行で従来の資産を保有する人もいます。ベターベストへの投資も、持続可能であれば、彼らも喜んで参加してくれます。

他には、資金が持続可能な方法に投資され、それに「意味がある」ことを期待するグループもいます。私たちに投資する企業や財団はわずかしかいませんが、将来的には債券を発行することで、よりプロフェッショナルな投資家たちとのかかわりも拡大していきたいと考えています。

私たちの資金の借り手は、通常、中小規模の企業であり、自ら巨額の投資を扱うほどには大きくないものの、堅実な財務基盤をもっています。彼らは資金の一部をクラウドファンディングで集め、一部を従来のローンで集めています。

アフリカでのオフグリッド施工:途上国では再エネプロジェクトの初期投資を集めることが困難(写真:BSW Solar)

アフリカでのオフグリッド施工:途上国では再エネプロジェクトの初期投資を集めることが困難(写真:BSW Solar)

−− ベターベストの投資モデルに適合するプロジェクトをどのように決めているのでしょうか?

私たちが投資するプロジェクトは、いずれも収益を生み出し、CO2排出を削減する高いポテンシャルがあることがエネルギーコンサルタントによって検証されてなければなりません。明確な経済的実現可能性分析は、私たちが次のステップに進む上での基盤となります。私たちが支援するプロジェクトでは、すべてのリスクが具体的なかたちで抑えられ、借り手は支払い能力がなければなりません。

また、どのような技術が使われるのかも重要なポイントとなります。例えば、太陽光発電プロジェクトの場合、私たちは経済性の評価を外部のサービスプロバイダーに依頼しています。私たちは、潜在的な投資家が何に対してサインアップしようとしているのかを明確にするため、常に透明性と詳細な情報を提供しています。

−− エネルギー効率化やその種のプロジェクトに投資することで、しっかりとした省エネを生み出すことができるとして、なぜいまだに企業は消費パターンを改善しはじめるのに消極的なのでしょうか?そこには構造的なハードルがあるのでしょうか?それとも、単純に機会が見逃されているだけなのでしょうか?

いくつかの要因が働いています。まず、一般的にエネルギー供給は企業の優先順位の中で高い位置にないということがあげられます。エネルギー消費を最適化する戦略を導き出すには長い時間と手間がかかり、通常、外部アドバイザーなしに進めることはできません。また、企業は利用可能なエネルギー効率化の技術を知りません。そして、エネルギー効率化に多大な初期投資がかかり、回収に長い期間がかかるという先述のハードルもあります。

−− しかし、保守政権が政治的に重要なトピックとして取り上げたこともあって、ドイツはエネルギー効率化投資を先導する場所なのではないでしょうか?

その問いに対するシンプルな答えはありません。もちろん、多くの他の国よりもドイツのエネルギー効率化の平均レベルは高いのですが、エネルギー供給が比較的安定しているので、人々はそれを当然のものと捉える傾向があります。そのため、建物、工場、その他のエネルギー消費資産の所有者は、暖房や照明、油圧システムなどでどうやって著しい効率化向上を生み出すかを真剣に考えていません。

−− ドイツの政治的文脈は、ベターベストの取り組みを後押しているとお考えですか?

まあ、もちろん、私に依頼が来ればもっとうまくできることがたくさんあるとは思います。しかし、公平に言えば、もし他の国であったらドイツほど簡単にできなかっただろうと思います。また、私たちは「恵まれた社会の不満(First World Problems)」と呼ばれるものをよく訴えます。しかしながら、基本的にドイツでの議論は、いつ実現するか、もしくは実現するかどうかわからない偉大な未来の発展に重点が置かれ過ぎていて、私たちがすでにもっているツールやスキルでできることを見過ごしているように思います。

私は、まだまだ活かし切れていないポテンシャルがあることから、建築で効率性の高い素材の利用を求める基準の採用を提唱します。より良いと思われていても存在しない解決策を優先して、既存の解決策を避けるのであれば、「新しい技術に開かれていること(open to new technology)」というお題目は空虚に過ぎません。

インタビュー:ベンジャミン・ウェアーマン(Benjamin Wehrmann)Clean Energy Wire特派員

元記事:Clean Energy Wire “Finance start-up Bettervest connects small investors with green energy projects” by Benjamin Wehrmann, May 2, 2019. ライセンス:“Creative Commons Attribution 4.0 International Licence (CC BY 4.0)” ISEPによる翻訳