太陽光が風力を超えて2020年は世界で過去最大の導入量に

2021年2月8日

2020年は新型コロナウィルスにより世界経済は大きな影響を受け、世界全体のCO2排出量は前年から約7%減少した[1]。同時に2020年にはパリ協定がスタートすると共に自然エネルギー市場も世界的に2030年までの10年を見据えて新たなステージを迎えている。その中で、2020年の自然エネルギーの成長はさらに加速している。

[1] Global Carbon Project: Carbon Budget 2020

世界の自然エネルギー

2020年の太陽光発電と風力発電と合わせた年間導入量は約200GWに達して、前年の約180GWを上回り、過去最高となった(図1)。2020年の太陽光発電の年間導入量は約130GWになったと Bloomberg New Energy Finance により推計されている[2]。一方、風力発電は約70GW以上が1年間に導入されたと Global Wind Energy Council により推測されている[3]。その結果、累積の設備容量では2020年末までに太陽光発電が風力発電を追いついてほぼ同レベルになった。

[2] Bloomberg New Energy Finance, “Energy Transition Investment Hit $500 Billion in 2020 – For First Time.” January 19, 2021.

[3] Global Wind Energy Council, “GWEC: Wind power industry to install 71.3 GW in 2020, showing resilience during COVID-19 crisis” November 5, 2020.

図1. 世界の自然エネルギー(太陽光および風力)および原子力の発電設備の導入量

出典:IRENA、BNEF、GWECなどのデータから作成

この10年間に世界の自然エネルギーはまさに急成長を遂げ、2020年末までには風力発電や太陽光発電の設備容量はそれぞれ700GWを超えて、それぞれ原子力発電の設備容量(約400GW)の2倍近くに達した。そのため、風力と太陽光を合わせた設備容量は1,500GW(1.5TW、15億kW)近くに達している。一方、原子力発電の設備容量は廃止が新設を上回り、すでに減少に転じている。

世界全体の2020年の自然エネルギー設備への投資額は3,000億ドルを超えたとBloomberg New Energy Finance により推定されているが、前年から2%増加して過去2番目の投資額だった。さらに電気自動車(EV)関連の投資が約1400億ドルに達し、熱分野の電化(ヒートポンプ)への投資額500億ドル等を加えると、コロナ禍の影響にも関わらず世界全体のエネルギー転換への投資額は初めて5,000億ドルを超えたと推計されている。

太陽光発電への設備投資額は前年から12%増加して約1,500億ドルでしたが、洋上風力の市場拡大が急成長して500億ドルに達する一方で、風力発電全体(陸上+洋上)への投資額は6%減少して約1,400億ドルになった。国別の投資額では中国がトップで836億ドルでしたが前年から12%減少している。一方で、欧州(EU)全体では818億ドルに達し、前年から52%増加して、2012年以来の投資額になっている。第2位の米国は前トランプ政権のもと設備投資額は493億ドルで前年から20%減少している。日本での設備投資額は太陽光を中心に193億ドルでしたが、前年から10%増加した。

中国の自然エネルギー

水力発電に加えて風力や太陽光の導入がこの10年間で急速に進んだ中国では、2020年には風力発電の割合が6.1%、太陽光発電が3.4%でVRE比率がすでに9.5%に達している[4]。水力も含めた自然エネルギーの全発電量に対する割合は28.5%に達する(図2)。風力発電の設備容量は280GWを超えており、太陽光発電の設備容量も約250GWと同じレベルに達している。これは世界全体の風力発電および太陽光発電の設備容量の約3分の1を占めることになる。

[4] China Energy Portal – chinaenergyportal.org/en/

図2. 中国国内の自然エネルギーによる年間発電量および割合のトレンド

出所:China Energy Portalのデータより作成

中国の年間発電電力量の規模(約7,600TWh)は、欧州28カ国全体の約3,100TWhの2倍以上あり、日本全体の年間発電量1,000TWhの7倍以上である。欧州および日本の発電電力量は減少傾向にあるが、中国では増加を続けている。以上の状況から、中国では発送電分離や電力市場の整備など電力システムの改革については欧州の様々な技術やノウハウが導入され、日本よりも先行してエネルギ―転換が進んでいる状況と考えられる。

欧州の自然エネルギー

主要な欧州各国の自然エネルギーによる2020年の年間発電電力量の割合の内訳を図3に示す。この図はドイツのシンクタンク Agora Energiewende が推計した欧州28カ国の電力部門に関する2020年の最新データに基づいている[5]。EU27カ国と英国と合わせた28カ国の平均では、自然エネルギーによる年間発電電力量の割合は38.6%に達し、化石燃料による発電の割合37.3%を始めて上回った。

[5] Agora Energiewende “The European Power Sector in 2020” 01.2021.

図3. 欧州各国および中国の自然エネルギーの年間発電電力量の割合(2020年推計値)

データ出典:出所:Agora Energiewende, China Energy Portalデータより作成

オーストリアでは、水力発電の割合が60%以上あり、風力10%やバイオマス6%と合わせて自然エネルギーの割合が80%近くに達している。変動する自然エネルギー(風力および太陽光)VREの割合がすでに55%に達しているデンマークでは年間発電量に占める自然エネルギーの割合が約76%に達している。スウェーデンでは68%、ポルトガルでは58%に達し、すでにイタリア、ドイツ、イギリス、スペインにおいても自然エネルギーの割合が40%以上に達して、欧州の平均を上回っている。VREの比率も欧州全体で20%に達しているが、ドイツでは30%を超えており、イギリスやスペインも30%近くになっている。

一方、原発の比率が70%近くに達するフランスでは自然エネルギーの割合は20%程度と日本と同じレベルで、VRE比率も10%に留まりである。バイオマス発電の割合が高い国としては、デンマークで17%、イギリスで12%程度だが、減少傾向にあり、2030年に向けたEU指令(RED II)では、バイオマスの持続可能性の基準がより厳しくなってきている。

ドイツの自然エネルギー

欧州の中で日本とほぼ同じ国土面積を持ち、経済規模が同程度のドイツの年間発電電力量に占める自然エネルギーの割合を振り返ってみたい。2000年の時点ではわずか6%だった割合が2020年には44%と7倍以上になったことがわかる(図4)。

図4. ドイツ国内での自然エネルギーの発電量と全発電量に占める比率の推移

出典:AGEB “STORMMIX 1990-2020“より作成

一方で、原発の割合は29%から11%まで低下しているが、原発ゼロとなる2022年に向けて着実に減少している。ドイツ国内で産出される褐炭を含む石炭の割合は、2000年には50%を占めていたが、2020年には排出量取引(EU ETS)での炭素価格の上昇などが要因となって23.4%まで減少し、風力発電の23.4%と同じレベルとなった。

ドイツでは2006年以降、エネルギーの消費量が減少傾向にありCO2排出量の削減が進んできたが、2020年にはさらに新型コロナウィルスの影響でCO2排出量が前年比で1割以上減少し、1990年比では約42%減少して、2020年の削減目標40%を達成したと推計されている[7]

[7] Agora Energiewende”Corona year 2020: record declines in carbon emissions and coal power” JAN 5, 2021.

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千葉県出身。環境エネルギー政策研究所理事/主席研究員。工学博士。東京工業大学においてエネルギー変換工学を研究し、学位取得後、製鉄会社研究員、ITコンサルタントなどを経て、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて取り組む研究者・コンサルタントとして現在に至る。持続可能なエネルギー政策の指標化(エネルギー永続地帯)や長期シナリオ(2050年自然エネルギービジョン)の研究などに取り組みながら、自然エネルギー白書の編纂をおこなう。自然エネルギー普及のため、グリーン電力証書およびグリーン熱証書の事業化、市民出資事業や地域主導型の地域エネルギー事業の支援などにも取り組む。

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