ドイツの再生可能エネルギー法2021 解説

ドイツの画期的な再生可能エネルギー法(EEG)は、太陽光発電と風力発電を国内で最も重要な電源の2つにしたことで知られていますが、新たな改革がおこなわれようとしています。気候変動やクリーンエネルギーの目標を達成するために、再生可能エネルギーは、より早く成長し、より安価になり、近隣の市民に受け入れられるようにならなければなりません。このファクトシートでは、再生可能エネルギーの成長予測を示し、2020年12月17日に議会で可決され、2021年1月1日に施行される予定の最新の法律草案で提案されている変更点を列挙しました。

2014年と2016年の2度の大改革を経て、ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)に新たな大改革が迫っています。法案を担当する経済エネルギー省(BMWi)が命名した「EEG2021」は、2020年9月23日に政府の閣議で承認されています。連邦議会は、その後数ヶ月の間に法案に多くの変更を加えました。このファクトシートでは、新法の最も重要な部分の概要を説明します。

20 年前に施行されたドイツの再生可能エネルギー法は、系統への優先接続を確立し、手厚い固定価格買取を保証したことにより、陸上風力、太陽光発電、バイオガスの大幅な成長をもたらしました。洋上風力や水力発電とあわせて、これらの再生可能な電源は現在、ドイツの電力消費量の半分を占めています。これまでさまざまな変更が加えられてきましたが、2021年1月から施行されるEEGの次の改正では、2020年の国による水素戦略や電気自動車充電のための電気料金設定などの新しい動きを取り入れながら、入札制を重視することで、再エネ発電事業者をより市場に対応できるようにするというEEGの基本原則を忠実に守っています。市場主導型の再エネの拡大を期待しつつ、政府はEEG による再エネへの支援をいつ、どのようにして完全に終了するかを、2027 年までに提案したいと考えています。

2050年 電力部門における温室効果ガスニュートラルが法律の一部となる

ドイツは、今世紀半ばまでに温室効果ガスニュートラルになるという目標を掲げており、これは2021年の EEG2021 の指針となっています。「この法律の目的は、2050年までにドイツ国内で発電または消費されるすべての電力を [中略] 温室効果ガスニュートラルな方法で発電することをたしかなものとする点にある」と、最新の草案には書かれています。ドイツで発電された電力とドイツに輸入された電力の両方がこの要件を満たさなければならないことになり、これは、EUにも2050年のカーボンニュートラル目標に向けて軌道に乗せるように期待をかけていることが示唆されます。

より野心的なEU気候目標との整合性

EU加盟国は、2030年の気候目標を引き上げることを決定しました。ドイツにとっては、これは各国の排出削減目標の調整を意味する可能性が高いと言えます。EEGに関しては「厳しいということは、再エネの拡大を加速させる必要があるということだ」と環境大臣のスベニヤ・シュルツ氏は述べています。議会との最終交渉での大きな争点の一つは、これらの再エネの全体的な拡大目標であり、多くの人々は、将来の電気自動車やヒートポンプによる電力需要を考慮して、もっと高い目標を設定すべきだと考えています。この問題は、電力消費に占める再エネの割合(現在65%)の目標の調整を2021年の第1四半期に延期することで解決しました。

再エネ入札 – 2030年の目標達成に向けた新たな拡大の道筋

新しいEEGでは、太陽光発電を100GW(現在は52GW)、陸上風力を71GW(現在は55GW)、バイオマスを8.4GW、洋上風力を20GWと、昨年末に決定された「気候行動計画2030」の目標を若干上回る計画となっています。同法は、再エネ目標である65%が達成できるように各年の導入目標をかため、変動する再エネの増加を系統で調整できるようにしています。

特定のエネルギー種に限定せず、陸上風力、太陽光発電、バイオマス、蓄電装置を組み合わせて電力システムを安定化させる、いわゆる「イノベーション・オークション」では、年間500~850MWの追加入札が行われる予定です。営農型やフローティング太陽光発電も、これらのオークションに参加することができます。

2021〜2030年のドイツにおける再生可能エネルギー電力設備容量目標と想定発電電力量

ドイツにおける再生可能エネルギー導入の年間入札量

先駆的な導入のための暫定的な措置

この法律には、20年間の支払い期間が終了し、2020年代には支払いを受けられなくなる小規模太陽光発電設備(100kWまで)に対する暫定的な措置が含まれています。これらの非常に小規模な太陽光発電所からの電力を販売することは、その所有者にとって経済的に実行可能ではないでしょう。しかし、撤去されたり、「乱暴に」電力を供給されたりすることを防ぐために、2027年までの間、市場価値からマーケティングコストを差し引いた金額で暫定的な報酬が与えられることになっています。

古い陸上風力発電は、2025年までに約16ギガワットが終了する可能性がありますが、最も古くて小さいものでも100キロワット以下の容量を持つことはほとんどないため、この暫定措置の恩恵を受けることはできないでしょう。しかし、これらの電力は従来型電源よりも優先給電されるため、系統に接続したまま電力を自ら販売することが可能です。COVID-19パンデミックにおける電力市場価格低下によって引き起こされる問題を軽減するため、法案には2021年の終わりまで陸上風力発電のための暫定的な支払い措置が含まれています。

2021年の最初の半年間に、エネルギー省は特に古い風力発電機を対象とする規制を通過させようとしています。2020年末と2021年末に固定価格支払いを失う風力発電所は、2021年に1.5GW、2022年に1GWの入札に参加することができます。入札量は、固定価格支払いを受けられなくなる風力発電所の約40%に相当すると、EEGでは述べられています。エネルギー省は、陸上風力発電の3.7GWが2021年に市場から撤退し、2022年には2.4GWが市場から撤退すると予想しています。

電力価格における再エネ賦課金の変更について

ドイツのほぼすべての電力消費者は、使用したキロワット時ごとに、いわゆる再エネ賦課金を支払うことで、再エネを支援しています。エネルギー消費量の多い企業は、国際市場での競争力が損なわれる場合には、賦課金の支払いを(一部)免除されることもあります。賦課金は、卸電力価格と再エネ設備が系統に供給するキロワット時当たりの保証された報酬との間のギャップを埋めるために使われています。

新しい設備、特に固定価格支払いが入札によって決定された設備は、市場の平均的な卸電力価格よりもわずかに多く受け取ることができます。一方、古い発電所の大部分は、市場価格を上回る金額を受け取る権利を持っています。卸電力価格と再エネの発電量に応じて、EEG 賦課金は毎年変動します。2020年には、課徴金は6.76セントに達し、これは平均的な家庭が支払う1キロワット時当たりの価格の約20%に相当します。

改革されたEEG 2021では重要な変更が加えられています。EEG賦課金の一部が連邦予算から賄われることになりました。2019年秋に合意された政府の気候パッケージでは、2021年に0.25ct/kWh、2022年に0.5ct/kWh、2023年に0.625ct/kWh、賦課金を引き下げることが規定されていました。政府は当初、この電力価格の引き下げに110億ユーロを充当し、2021年時点では輸送用燃料や暖房用燃料のCO2価格設定による収入も充当する予定です。賦課金は2021年には6.5ct/kWhに設定されています。

また、EEGは、賦課金の支払いを免除されている企業への措置を約束しています。COVID19 パンデミックによる景気の悪化のため、一部の企業のエネルギー使用量が賦課金免除の閾値に届かず、賦課金を全額支払わなければならない場合、さらなる負担が発生することになります。

新しい EEG の他の要素として、陸上風力発電や太陽光発電の入札における上限値の引き下げ、設置可能なエリアの拡大による太陽光発電システム間の競争促進など、消費者にとってのコスト削減を目的としています。

再生可能エネルギーの普及拡大に向けた国民の受容性を高める

政府は、新しい EEG により、再エネ導入に対する受容を促進するという約束を果たしたいと考えています。風力発電所の建設を許可した地域では、20年間、風力発電所からの収入のうち0.2セント/kWhが保証されます。この金額は、風力発電所の運営者が近隣住民に割引価格で電力供給契約を提供した場合、減額することが可能です。また、風力発電事業者は、会社の住所がある自治体ではなく、風車が設置されている自治体に税金の大部分を支払わなければなりません。

また、政府は、いわゆる「テナント電力スキーム」が軌道に乗るように支援したいと考えています。住宅所有者は、屋根に太陽光パネルを設置し、固定価格の支払いを受けることで、長年にわたってエネルギー転換の利益を得ることができましたが、賃貸アパートに住む人々は参加することができませんでした。このようなアパートの大家は、太陽光発電を設置して入居者に利用させる十分なインセンティブがありませんでした。EEG2021 では、テナントが支払う賦課金の水準を引き上げるとともに、大家の営業税が免除されるので、さらに魅力を高めることが可能になりました。

南部での風力発電やバイオマスの増加

(風が弱い)ドイツ南部での風力発電の拡大を奨励するために、新しい EEG では「南部向けクォータ(quota for the south)」が導入されました(2021年から2023年の間に落札される入札の15%が南部からのものでなければならず、2024年時点では20%)。同様のクォータ(50%)がバイオマス設備の入札にも適用されます。これは、電力消費が多い南部の産業エリアの原子力発電所が2022年末に完全に停止されるまでに南北の送電網接続が間に合わなくなるリスクを考慮して、発電設備立地の南北不均衡を減らすことを目的とした措置です。

一方で、法律では、いわゆる「系統混雑地帯」と呼ばれる地域(主にドイツ北部)が除外されており、それはこのエリアでのさらなる陸上風力の増加が系統に問題を生じさせる可能性が高いためです。エネルギー省によると、この法律は「いくつかの理由で」機能しなかったとのことです。

マイナスの電力価格

マイナスの電力価格は、例えば祝日などの非常に少ない電力需要と、特に晴れた日風の強い日に太陽光発電や風力発電からの高出力が重なった場合に発生します。マイナスの市場価格は再エネ賦課金を押し上げるため、EEG2021 は、このような時期の過剰生産を避けるべく、新規の再エネ発電設備がより柔軟に対応することを強制しています。スポット市場価格が 6 時間連続ではなく、4 時間連続でマイナスになった場合には、固定価格買取制度は廃止されます。

政府は、発電事業者は「蓄電事業者との協力契約を結んだり、より継続的な発電を可能にする新技術を利用したり、電力先物市場でのヘッジ取引を行ったりするなど、マイナス価格局面に対するヘッジ方法を独自に見つけなければならない」と理由を述べています。エネルギー省が2021年初頭に再生可能エネルギーの目標を見直した後、ルールがさらに厳格化される可能性があります。

太陽光発電

同法案は、750kW以上の屋根上に設置された太陽光発電設備の入札参加を義務付けるものです。すべての小規模な屋根上太陽光発電設備には固定価格買取制度が適用され、市民が運営するソーラーパークにも同様の制度が適用されます。また、EEG 2021では、300kWの屋根上太陽光発電にも入札に参加するオプションが与えられています。300~750kWのシステムはすべて、入札に参加するか、固定価格買取制度を利用して電力の一部を自ら消費するかの選択肢が与えられています。後者は、発電量の50%までしか固定価格買取を受けることができません。

スマートメータリング

エネルギー省は「エネルギー転換のデジタル化を進めるが、同時に、影響を受ける再エネ発電所の運営者に過度の負担をかけない」ため、小規模再エネ設備へのスマートメーター義務化(1〜7kW が対象)を白紙に戻しました。

水素を取り入れる

政府は、新しい水素戦略にそって、グリーン水素の製造者が使用する電力に対する再エネ賦課金の支払いを一部免除しています。再エネを利用して水素を生産し、その設備や製品が系統の安定性とエネルギー供給の持続可能な発展に貢献していることが確認されている企業は、賦課金の全額が免除されますが、その他の企業は部分的な免除となります。しかし、これらのグリーン水素製造事業者は、EEG の支援を受けていない再エネ発電設備、例えば電力買取契約(PPA)による再エネ電力を利用しなければなりません。

気候中立社会のキーテクノロジーのひとつであるグリーン水素は、スケールアップや学習期間中のコストの高さを考慮する必要があり、コスト削減の枠組み条件が必要であると政府は理由を述べています。また、生産の海外移転を防ぐための支援も行われています。

政府は、2030年までに最大 290件の水素プロジェクトが部分的または完全免除を申請すると予測しています。そのころには、水素の市場導入が完了し、EEG 賦課金の完全免除はもはや必要なくなると政府は主張しています。

法案に欠けているもの

政府連立政権は、再生可能エネルギー法に関するさまざまな決定を2021年に延期しました。これには、EUの新しい2030年の気候目標にそったより高い再エネ目標の決定や、古い風力発電の入札に関する仕様などが含まれています。

法案に加えて、連邦議会は、近い将来、再エネ促進の分野で政府が取ることを期待するさらなる行動を列挙しました。その中には、再エネ賦課金の廃止後に導入すべき資金調達モデルの考え方、既存の風力発電所のリパワリングを促進するための法改正、再エネ事業者と民間消費者との間の電力購入契約(PPA)の枠組み条件の改善などが含まれています。

同法案への批判については、“Breakthrough in Germany’s renewables reform: wind and solar capacity to grow faster” をご参照下さい。

記事:ケアスティン・アップン(Kerstine Appunn)Clean Energy Wire記者

元記事:Clean Energy Wire “What’s new in Germany’s Renewable Energy Act 2021” by Kerstine Appunn, 6 Jan 2021. ライセンス:“Creative Commons Attribution 4.0 International Licence (CC BY 4.0)” ISEPによる翻訳