イギリスの100%自然エネルギー

昨年、イギリスの代替技術センター(British Center for Alternative Technology)は、イギリスが2030年までに100%自然エネルギーを持続可能なかたちで達成できるかどうかを調査しました。今回は、その調査結果を見てみましょう。

イギリスの代替技術センターの調査プロジェクト”Zero carbon Britain”が今回3つ目の報告書を出しました。最新版は240ページあり、調査の冒頭の40ページが組織の歴史的背景と炭素に関する議論にあてられています。この点で、この調査は典型的にドイツとは異なるものです。ドイツの研究者たちは通常、気候変動の議論の場で一般人のために専門性を抑えることはしません(気候変動はドイツではあまり疑問視されていないのでほとんどそういった機会はありませんが)。むしろ、ドイツの科学者たちは目まいがするような大量の数字と共に難解な言葉で説明します。ドイツには「一般人向けの科学」というものはなく、ドイツの一般人が研究者と話す場合、一般人の方が専門家のレベルに合わせなければありません。

イギリス諸島は設備容量でドイツよりもはるかには少ないものの、西ヨーロッパにおける風力のサウジアラビアとなっています。(Centre for Alternative Technology)

イギリス諸島は設備容量でドイツよりもはるかには少ないものの、西ヨーロッパにおける風力のサウジアラビアとなっています。(Centre for Alternative Technology)

私にはこのイギリスの調査の包括性に関して公正な評価を下すことができないので、読み慣れている数値を直接見てみましょう。イギリスには以下の電力設備容量があるとされています。

      • 洋上風力発電 140GW
      • 陸上風力発電 20GW
      • 波力発電 10GW
      • 潮力発電20GW
      • 太陽光発電 75GW
      • 地熱発電 3GW
      • 水力発電 3GW

他のシナリオ同様、このシナリオでは他の部門も電化されることを想定しているため、電力は他のサービス(一般的には熱と輸送)を担う可能性があります。ある程度の熱量(全エネルギー消費の約13パーセント程度)は太陽熱と地熱から供給され、バイオマスは全エネルギー供給量の1/4近くをまかないます。再生可能熱もしくはバイオマスに関する設備容量の数値はありませんが、いずれもTWh単位で表される規模です。

太陽光発電の数値は極北にあるイギリス(イギリス南部はドイツ北部と同緯度)としては驚くほど多くなっています。同様に、イギリスが陸上風力発電に影響が出るほど洋上風力発電に注力するのは理解しがたいものがあります。イギリスは効率性を重要視しており、洋上風車には高い設備利用率があります。しかし、洋上風力発電は非常に費用がかかる上、イギリスでもより安く建設できて、景観影響に対する社会的受容性を高めることもある陸上の市民風車プロジェクトにはまだ気付いてないようです。おそらく洋上・陸上風力発電の数値は、経済的・技術的分析ではなく、イギリスで社会的に何が受け入れられるかという先入観によるものなのでしょう。

この調査では「総電力生産(約354TWh)の約半分」は蓄電する必要があるだろうと述べています。短期的には、エネルギー貯蔵は熱とバッテリー(電気自動車を含む)のかたちで行われるものの、環境に優しい水素の生産に35GWの電解装置を利用するとされています。興味深いことに、この調査では、このプロセスの効率性は、私がよく見かける値(180TWhの余剰電力で126TWhの水素を電解生産)よりも少し高く設定されており、全体効率で67パーセント程度になっています。私がよく見るのは50パーセント程度です。

転換シナリオでのもっとも増加するのはエネルギー効率化であり、エネルギー消費量を約60パーセントに下げることになります。(Centre for Alternative Technology)

転換シナリオでもっとも増加するのはエネルギー効率化であり、エネルギー消費量を約60パーセントに下げることになります。(Centre for Alternative Technology)

この調査は「脱炭素」について触れており、原子力を次のように述べています:

 「海面上昇と高潮の増加により沿岸部での原子力発電設備の深刻な災害が増加します(グリーンピース2007)。私たちのシナリオは、エネルギーミックスから原子力を外すことによって、このリスクを除外しています。」

おそらくこの調査の一番良いところはその包括的な視点にあります。バイオマスの調査では持続性を重要視しています。この調査シナリオによると、イギリスでの森林面積は倍増し、国土の泥炭地の半分は炭素捕捉のために復元されます。農業と一般の土地利用を考慮し、航空産業と化石燃料をエネルギーとして利用しないことを考慮しています。農業で排出されるメタンガスを減らすための唯一の明確な方法は肉の食べる量を減らすことだと述べています。実際に、この調査ではイギリスは肥満を減らすために食品の全体的摂取量を減らす必要があると述べています。この調査は実行可能な行動指針で締めくくっています。

私が最も批判したい点は調査の時間軸についてです。仮に我々が2030年までに100%の再生可能エネルギーを達成しようとすると、既存設備の早期撤退が実際の障害となります。すべての自動車、暖房システム、電力設備等、私たちが現在所有するすべてを今後16年以内にスクラップにしなければならなくなります。私の見落としがない限り、この調査はこの課題について取り組もうとさえしていません。

全体として、この報告書は議論に価値のある貢献をしています。おそらく文化的な理由で、このシナリオの具体的な組み立てはドイツの人々が期待するものとは異なります。その代わり、1点だけはっきりしている点は、再生可能エネルギーの将来は非常に非効率的な電解プロセスの可能性に大きく依存しているということです。

クレイグ・モリス@PPchef

元記事:Renewables International, “100 percent renewable UK”(2014年12月9日掲載)ISEPによる翻訳