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IRENAによる再生可能エネルギー蓄電の概要

2015年4月10日

国際再生可能エネルギー機関は、1月に発表した調査で世界の展望を提示しています。さまざまな国の情報をカバーしつつも、いくらかの奥行きを犠牲にしていることがドイツの描写からわかります。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は1月に5件の調査結果を発表しており、それぞれが興味深いものです。先日、私は米国についての国別レポート翻訳)について触れました。本日は、「再生可能エネルギーの蓄電:市場の現状と技術の見通し」と題するレポートについて簡単にレビューしたいと思います。

まず、IRENAの国際的な展望とは、世界中の幅広い事例を調査する中で、特に島嶼地域に焦点を当てていることを意味します。小規模系統の島嶼地域は電力取引の特別な事例であるため、蓄電の必要性はほとんどありませんでした。しかし、発展途上国の小規模系統は蓄電を利用する主要な地域でもありました。途上国でのコスト検討は先進国での検討とは大きく異なります;「再生可能エネルギー電力+蓄電」のコストを「系統接続型」のコストと比較するのではなく、「燃料オフセット」のコストと比較するのです。言い換えると、市場によって大きく異なるものの、一般に島嶼地域や遠隔地で蓄電バッテリーはもっとも競争力ある選択肢だと考えられています。

国別の電力分野における蓄電バッテリー設備容量の見積もり(MW)

Figure 22
IRENA(青:運転中の設備、赤:公表/契約/建設中の設備)

私が驚いたのは、米国が今後の導入をもっとも準備していますが、調査対象となったすべての国の中でもっとも蓄電バッテリーを導入しているのが日本だということです。ドイツ国内では蓄電の必要性が叫ばれているものの、実際にはほとんど導入されてないだけでなく、今後の導入準備もほとんどないということが明らかになりました。しかしながら、この調査結果は注意して見る必要があります;Pew Charitable Trustsによるクリーンエネルギー投資についての調査にもあるように、小規模システムのデータは入手が難しいのです。IRENAの調査では次のように述べられています:「表22のデータには、家庭や商業施設といった場所での分散型導入が含まれていないため、蓄電バッテリーは少なく見積もられています。本来的に民間で小規模に導入される蓄電バッテリーがデータセットに現れることはほとんどありません。」

この調査のもっとも興味深い点のひとつが、ドイツを事例として、蓄電バッテリーのコストを示す下記の表です。各列の最下段の価格から、約40セント/kWhという数値を見つけることができます – そして、その中には蓄電される電力のコストは含まれていません。これはどういったことを意味するかというと、例えば、蓄電された太陽光電力は約50セント/kWhかかるということであり、10年ほど前の比較的高価な太陽光電力(蓄電なし)と同等に戻ってしまうことになります。

ドイツ市場で入手可能な蓄電バッテリーシステムのコスト計算

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コストについてのレポートにも、議論の俎上に載せたくなる興味深い図が含まれています。

ドイツにおける太陽光電力蓄電のグリッド・パリティ

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ここで、グリッド・パリティには2種類あることがわかります。1つ目は、太陽光電力のコストが小売価格と同等になるポイントです;2つ目は、太陽光電力と蓄電のコストが小売価格と同等になるポイントです。数年前、人々は一般的に1つ目のポイント(蓄電なし)を聖杯のように思っていました(私はそう思っていませんでした)。2つ目のポイントは、「系統からの離脱が発生する」ことを意味するので1つ目のポイントよりも遥かに重要です – 家庭は系統から電力を購入するよりも太陽光パネルからの電力を自ら蓄電する方が安くなるのです。そして、非常に魅力的なことに、IRENAはドイツのデータにもとづいて、今年にもこのポイントに達するだろうと見込んでいます。

この知見は、現在の小さな市場規模とは正反対のものです。図は「5kWhバッテリーパックと、2013年にEUR 2 300/kWhを出発点とするリチウムイオンバッテリーパック」を前提としています。これは、ドイツの人々が太陽光発電+蓄電で今年にも手頃な値段で完全にオフグリッドにできるという前提には立っていません:

「これは消費者が完全に自立するという意味ではなく、彼らが自家消費の割合を高めるインセンティブとなるでしょう。そして、それは市場成長が金融支援と切り離され、自続するようになることを潜在的に示唆しています。」

ドイツでの太陽光発電+蓄電の課題は、季節にかかわるものとなるでしょう – 電力とエネルギー消費がともに急激にあがる夏から冬にかけて、そこそこの日射量を得るというものです。これについてIRENAは、ドイツの家庭が、実際に系統から電力を買うよりも、手頃な値段で太陽エネルギーを自ら蓄電できるようになるポイントが来ると述べているわけではないのです。それでも冬のギャップを埋めるという課題は残ります。

さらに、IRENAはドイツについてやや遅れた情報を利用しています。例えば、調査では次のように述べられています:

「現在検討されている自家消費電力への課税という提案は、太陽光発電と蓄電という方式の経済性にネガティブな影響を与えるでしょう。」

実際に、この提案は8月から法律になっていて、10kW以下の小規模太陽光発電設備(つまりほぼすべての家庭用設備)は対象除外となっています。さらに、固定価格買取制度のコスト見積もりはやや遅れています:

「ドイツでは、2014年末に新規導入される設備のFIT価格は、規模に応じて0.12〜0.15ユーロ/kWh(Bundesnetzagentur, 2014)となっている一方で、小売価格は約0.30ユーロ/kWhとなっています。」

現在のFITレートはここから見ることができます。しかし、2014年12月1日の時点で最も高いFIT価格は12.99セント/kWhで、最も安い場合で9.12セント/kWhです。

皮肉にも、IRENAが示したものよりも価格は低いので、実際には太陽光発電+蓄電のグリッド・パリティは調査結果が示したポイントよりも現在に近くなります。しかし、別の箇所では、ドイツでは「太陽光発電システムの約12%はバッテリーシステムとあわせて導入されている」と述べていて、研究者たちは、調査結果の発表締め切りにあわせて、秋に発表された統計を最新データとして集めていたことがわかります。

最後に、この調査は住宅用太陽光発電+蓄電バッテリーシステムは系統への依存度を下げる方に向かうべきか、もしくは系統のニーズに対応する方に向かうべきか、問いを投げかけ、下記の図を提示しています。最近、私はよく似た図を使って系統にフォーカスした最適化に向かうべきであると述べています。

太陽光発電と蓄電バッテリー

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私がドイツについてもっともよくわかっているので、ドイツに関する部分のみを取り上げましたが、間違いなくこの調査はより幅広い範囲で読む価値があります。例えば、4年前に私は、中国が系統に接続できるよりも速く風力発電を建設しており、導入された設備の約30%は実際には発電していないということを書きました。今日でも、中国に導入された75GWの風力発電のうち、61GWしか実際には稼働していないことをご存知でしょうか。

クレイグ・モリス@PPchef

元記事:Renewables International, IRENA’s overview of battery storage for renewables(2015年2月3日)ISEPによる翻訳

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